- 大麻取締法違反で有罪になった家族の保釈は認められるのか?
- 大麻取締法違反での保釈にはどのような種類があるのか?
- 大麻取締法違反での保釈に対して力を入れている弁護士はいるのか?
近年、大麻の検挙人員は連続して増加傾向にあり、特に若年層を中心として大麻乱用が拡大しています。これは特にインターネットの発達により、容易に大麻が入手しやすい状況にあることが要因の1つと考えられています。
大麻の所持で逮捕されてしまった場合、保釈されることはあるのか、保釈されるには何をしなければならないのか、など逮捕後にどうなるのか不安を感じる方もいることでしょう。
そこで今回は、薬物事件に詳しい弁護士が、大麻取締法違反での保釈とはどのようなものか・保釈が認められるポイント・保釈に強い弁護士の特徴について解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
大麻取締法違反での保釈とは
大麻取締法違反で逮捕された場合での保釈について、ここでは以下の3つについて解説します。保釈とは、逮捕・起訴された被告人が、一定金額の保釈金を納付して身柄を解放してもらう刑事上の制度です。種類を問わず保釈を請求する場合は、弁護士に保釈請求書を作成してもらい、裁判所に提出し保釈を請求します。保釈には、以下の3種類があります。
- 権利保釈
- 裁量保釈
- 職権保釈
それでは、1つずつ解説します。
権利保釈
1つ目は、権利保釈です。
必要的保釈ともいいます。権利保釈は、保釈請求があった場合に、法律に規定する一定の例外に該当しないかぎり、裁判所に認められる保釈です。これに対して、保釈請求が認められない例外のことを除外事由といいます。権利保釈は、刑事訴訟法89条に記載されている事項に該当しない限り、保釈が許可されます。該当する事項は、以下の通りです。
- 重大な罪を犯した
- 重大な犯罪で逮捕され有罪宣告を受けた
- 常習犯である
- 証拠隠滅のおそれがある
- 証人脅迫などのおそれがある
- 氏名・住所が不明
裁量保釈
2つ目は、裁量保釈です。
裁量保釈とは、権利保釈の要件を満たさなくても、裁判所の裁量によって認められる保釈のことをいい、任意的保釈とも呼ばれています。裁判所に保釈を請求すると、裁判官は権利保釈の許可について判断をします。権利保釈は、法律に規定する除外事由に該当しない限り必ず許可しなければなりませんが、除外事由があれば基本的に保釈は認められません。
しかし裁判官が、被告人の健康・経済・社会生活の不利益などを考慮して、保釈することが適当であると認めるときには、たとえ除外理由があっても裁判所の裁量で保釈を行います。
裁量保釈は、権利保釈が認められないときに初めて検討されます。裁量保釈が認められるためには、保釈を認めるべき特別の事情が必要です。なお、特別の事情は、刑事訴訟法90条に規定されています。
職権保釈
勾留による拘禁が不当に長くなった場合には、「裁判所は、第八十八条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない」と法律により規定されています。これを職権保釈、あるいは義務的保釈といいます(刑事訴訟法第91条)。
職権保釈は、不当に長い拘禁があることが要件とされるので、実務上では滅多にこれが問題になることはありません。不当に長い拘禁とは、単なる時間的長さではなく、拘禁の態様・事案の内容・被告人の健康状態など、総合的な観点から具体的事案に応じて判断されます。
大麻取締法違反で保釈が認められる場合・認められない場合
大麻取締法違反で保釈が認められる場合と認められない場合とは、どのような場合でしょうか?ここでは、以下の3つについて解説します。
- 大麻取締法違反の罰則
- 保釈が認められる場合
- 保釈が認められない場合
では、1つずつ解説します。
大麻取締法違反の罰則
1つ目の、大麻取締法の罰則について見てみましょう。
罰則は、下表の通りです。
罰せられる行為
|
営利目的無し | 営利目的有り |
所持 | 5年以下 |
7年以下
事情によっては200万円の罰金を科せられるときもあり |
譲渡/譲受 | 5年以下 |
7年以下
事情によっては200万円の罰金を科せられるときもあり |
栽培 | 7年以下 |
10年以下
事情によっては300万円の罰金を科せられるときもあり |
輸入/輸出 | 7年以下 |
10年以下
事情によっては300万円の罰金を科せられるときもあり |
被告人に営利目的がある場合は、懲役と罰金の併料が行われることもあるので、注意が必要です。
保釈が認められる場合
2つ目は、保釈が認められる場合について解説します。
大麻事件で逮捕・起訴後に保釈されるためにも、まず保釈請求をする必要があります。保釈請求ができる人は、「勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹」です(刑事訴訟法第88条)。
通常は、勾留後に被告人から依頼された弁護士が保釈請求を行います。保釈を請求する場合には、保釈金が必要です。保釈金の相場は大麻事件の内容により異なりますが、単純所持して逮捕・起訴された事案では、おおよそ150万円あたりが保釈金の相場といわれています。
大麻の所持量が通常よりも多かったり、組織的な犯行であることが明白であるなどの場合には、保釈金の金額も変わってくるので注意が必要です。
保釈金は被告人の逃亡を防止するために担保される金銭であることから、罪状が重大になればなるほど、保釈金の金額も高くなる傾向にあります。特に、営利目的の大麻事件では、保釈金が高くなる可能性があるでしょう。
保釈が認められない場合
3つ目は、保釈が認められない場合について解説します。
大麻事件で逮捕・起訴されて保釈を請求しても、法律に規定する除外事由に該当する場合は、保釈は認められません。たとえば、過去に重大犯罪で有罪判決をうけている場合には、保釈は認められない可能性が非常に高いでしょう。保釈が認められたとしても、相当に高額な保釈金を納付することになります。
また、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合には裁量保釈も認められません。乾燥大麻は、軽量で持ち運びやすいものです。そのため、隠したり捨てたりする隠滅のおそれがあり、少しでも証拠隠滅の可能性があれば保釈は認められにくいことが考えられます。
大麻取締法違反で保釈が認められるポイント
大麻取締法違反で保釈が認められるための3つのポイントについて確認します。
- 証拠隠滅の恐れがない
- 逃亡の恐れがない
- 仕事・健康の理由で保釈の必要性が高い
では、1つずつ見ていきます。
証拠隠滅の恐れがない
1つ目は、証拠隠滅の恐れがないことです。
証拠隠滅とは、証拠となるものを隠すとイメージされがちですが、被害者・目撃者に対して、被疑者にとって有利になるよう話をしてもらえるよう働きかけること・共犯者との口裏合わせ・有利な証拠の捏造なども含まれます。
保釈を認めてもらうためには、被害者・目撃者・共犯者と接触する機会がないことを裁判官に理解してもらう必要があります。
逃亡の恐れがない
2つ目は、逃亡の恐れがないことです。
身軽で逃亡しやすい状況にある場合は、逃亡の可能性が高いと判断される可能性があります。そうでないことを証明するためには、住居・家族・自身の仕事の状況などが考慮されます。
定まった住所地があり家族がしっかりサポートできる状況にあること・本人が仕事に就いていることなどが重要視される傾向にあります。
家族のサポートが受けられる
3つ目は、家族のサポートを受けられることです。
大麻依存から抜け出すには、本人だけではなく、家族も薬物犯罪に対する知識を学んでおくことが重要です。家族が薬物に手を出したその背景、特に家庭環境を探ると更生へ向かうことが多くあります。犯罪の背景には、家庭環境が影響していることが多いためです。
活動としては、薬物依存者の自助グループや精神保健福祉センターなど行政機関に問い合わせ、専門的な治療方法などの情報を得るよう務めることが重要です。
大麻取締法違反での保釈請求に強い弁護士とは?
大麻取締法での保釈請求に強い弁護士とは、どんな弁護士でしょうか?
以下の2つが重要なポイントです。
- 薬物事件に多くの実績がある
- 保釈事例に経験豊富であること
では、1つずつ見ていきましょう。
薬物事件に多くの実績がある
1つ目は、薬物事件に多くの実績がある弁護士であることが重要です。
弁護士は、法律事務を処理することを専門とする職種ですが、扱う分野は幅広いため、それぞれに専門分野があります。刑事事件、特に、薬物事件の実績が多い事務所に相談することをおすすめします。
保釈事例に経験豊富であること
2つ目は、保釈事例に経験豊富な実績を持つ弁護士であること、です。
保釈が認められるかどうかは、さまざまな要素を考慮して判断されます。罪の大きさ・刑の重さ・犯罪の悪質さ・証拠隠滅の可能性・被告人の職業・家族の事情、などこれらの諸事情を考慮して総合的に判断します。
大麻取締法違反の保釈事例を豊富に持つ弁護士は、保釈許可決定を早く得るための豊富な知識を持っています。保釈を得られるか得られないか、弁護士により左右されることもありますので、弁護士に依頼する前には、掲載サイトなどを詳細に確認することも大切です。
まとめ
今回は、薬物事件に詳しい弁護士が、大麻取締法違反での保釈とはどのようなものか、保釈が認められる場合と認められない場合、保釈が認められるポイント、そして大麻取締法で保釈に強い弁護士とはどのような弁護士なのか、について解説しました。
特に、大麻事件では輸入や営利目的がある場合は、保釈が認められにくい傾向があります。そのため、弁護活動により大きく変わるので、経験の豊富な弁護士に依頼することが重要です。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設