- ラッシュの所持・使用は自首以外でもバレるのか
- ラッシュの所持・使用で背負う罪は?
- ラッシュの所持・使用で頼れる弁護士とは?
ラッシュは、2014年4月1日の医薬品医療機器法(旧薬事法)で「禁止薬物」に指定されるまでは所持や使用で逮捕されることはありませんでした。しかし、現行の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)では、ラッシュの所持・使用は規制され重い処罰の対象になります。
そこで今回は、薬物事件に詳しい弁護士が、ラッシュの基礎知識、ラッシュによる事件が生活に与える影響、ラッシュの所持・使用による事件の流れ、弁護士ができること、薬物事件に強い弁護士を見極めるポイントなどについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
ラッシュの基礎知識を弁護士が解説
まずラッシュの所持・使用に関する基礎知識について弁護士が解説します。
- ラッシュの法的な扱い
- ラッシュの所持・使用で問われる罪とその重さ
- ラッシュの所持・使用が発覚するきっかけ
1つずつ、見ていきましょう。
ラッシュの法的な扱い
1つ目は、ラッシュの法的な扱いについてです。
ラッシュとは、亜硝酸エステルを主成分とする吸引剤のことであり、危険ドラッグに指定されています。2006年11月に厚生労働省薬事・食品衛生審議会指定薬物部会において、ラッシュは「指定薬物」とされました。
2007年には医薬品医療機器等法で「指定薬物」となり、業者による販売などが違法になりました。また2014年4月1日の医薬品医療機器法では「禁止薬物」として指定され、個人での所持や使用なども禁止されました。2015年には関税法改正により個人輸入も違法とされ、刑事罰の対象となっています。
ラッシュの効果は、覚せい剤に酷似しており吸引すると性的興奮が高まるとされています。揮発性の液体でガラスの瓶に入った状態で流通しています。
室内で気化しその気体を鼻から吸引することで多幸感が得られます。ラッシュの使用は性的興奮を促すためであり、効果も数分で切れてしまうことから媚薬のように手軽な感覚で広く出回っています。本来の使い方としては、工業用の用途や医療品として狭心症の治療などに使われていました。
依存度はそれほど高くないのですが、心臓などに問題のある場合、アルコールとの併用により、血管が拡張して危険なレベルに至ることがあります。海外では違法ではないので、ラッシュを購入できますが、個人輸入すると逮捕されますので注意しましょう。
ラッシュの所持・使用で問われる罪とその重さ
2つ目は、ラッシュの所持・使用で問われる罪とその重さについてです。
ラッシュは、覚せい剤に酷似する効果のある危険ドラッグであるのに、覚せい剤取締法や大麻取締法のように取り締まるための法律がありません。ラッシュのような危険ドラッグは、そもそもがこうした法の目をくぐりぬけるために作られたものなのです。
旧薬事法で規制されるまでは「合法ドラッグ」とも呼ばれていました。しかし、現行の薬機法では禁止薬物として指定されているため、これを所持・使用した場合は、3年以下の懲役、または情状により3年以下の懲役と300万円以下の罰金となります。
ラッシュの所持・使用が発覚するきっかけ
ラッシュの所持・使用が発覚するきっかけは、以下の3つです。
- 職務質問された
- 共犯者の供述
- 通報
1つずつ、見ていきましょう。
職務質問
1つ目は、職務質問です。
ラッシュをはじめとする多くの薬物事件では、職務質問がきっかけで逮捕されることが多くあります。
警察官は、事件性の疑いがあると判断した場合は任意で所持品の検査ができます。検査により違法薬物が見つかった場合は、その場ですぐに簡易検査を行います。簡易検査で陽性反応が出れば薬物所持で現行犯逮捕となります。簡易検査で陽性が出ない場合でも、尿検査で陽性反応が出れば薬物使用で現行犯逮捕となります。
共犯者の供述
2つ目は、共犯者の供述です。
ラッシュは製造から所持や使用に至るまで、さまざまな人の手を通じて流通しています。そのため、すでにラッシュで逮捕されている人がいるような場合は、その人の供述により流通に関わった人たちが逮捕される場合もでてきます。
通報
3つ目は、通報されてしまった場合です。
ラッシュを使用した場合は、錯乱状態になり路上で叫んだり異様な行動に走ることもあるので、それを目撃した周囲の人たちが通報することもあります。また自治体の民間パトロールなどにより通報される場合もあります。
さらに、ラッシュを乱用することにより幻覚などの症状が出て使用者本人が怖くなり、自ら警察に出頭するようなケースもあります。
ラッシュによる事件が生活に与える影響を弁護士が解説
会社員がラッシュによる事件で逮捕された場合には、基本的には警察から会社に逮捕の連絡が行くようなことはないので、会社に知られずに事件を解決できれば解雇されるようなことはないでしょう。
しかし、ラッシュなどの危険ドラッグは勾留される可能性の高い犯罪です。勾留期間が長くなり身体拘束が長期に及べば、会社にも事件のことが知られる可能性が高まり、長期欠勤だけでも解雇事由になってしまいます。会社から懲戒解雇される可能性が高いため、早期釈放を目指すことが何よりも重要になってきます。
学生がラッシュによる事件で逮捕された場合も、大学生以上であれば、警察から学校に逮捕の連絡が行くようなことは原則としてありませんが、それでも勾留により身体拘束が長くなり、学校に事件のことが知られる可能性は高まるでしょう。長期の休学によって学校から退学処分になる可能性も出てきます。さらに、逮捕により実名報道で家族にも迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
現在、日本の刑事事件の有罪率が99.9%である以上、一度でも逮捕・起訴されてしまえば、有罪判決が出てしまう可能性が非常に高くなります。前科がつくことを避けるためには、刑事裁判が開かれなくなる不起訴処分を獲得することが不可欠になります。できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
弁護士が教えるラッシュの所持・使用による事件の逮捕から流れ
ラッシュの所持・使用による事件の逮捕からの流れを解説します。
- 逮捕
- 勾留
- 起訴・不起訴の決定
- 裁判
1つずつ、見ていきましょう。
逮捕
1つ目は、逮捕です。
ラッシュの所持・使用の疑いにより逮捕された場合、逮捕直後から警察による取調べが行われます。警察で最大48時間の身柄を拘束され、警察では48時間以内に被疑者を検察に送致します。
この時点で早めに弁護士に相談して、取調べのアドバイスを受けることが重要と言えます。
勾留
2つ目は、勾留です。
警察から事件が検察庁に送致されると、検察庁では裁判所に対して10日間の勾留請求をするか否かを決定します。犯罪の嫌疑があり、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合は、検察官は裁判所に対して勾留を請求します。
この決定は、逮捕から72時間以内に行わなければなりません。逮捕されたときから、最大72時間(3日間)身体拘束されることになります。
勾留される期間は、原則として勾留請求の日から10日間です。さらに裁判官が必要と認めた場合、10日間の延長が認められます。ほとんどの薬物事件では10日間の勾留延長がなされるので逮捕の日数を足すと、合計23日間は留置所に勾留されることになります。
裁判所では、検察庁からの勾留請求に対して、これを認めるか否かの決定をします。勾留を認める必要がないと裁判所が判断すれば勾留請求を却下して、被疑者は釈放されます。被疑者は、裁判所の勾留決定及び勾留延長決定に対して、準抗告という異議申立の手続きができます。裁判所の勾留決定に理由がない場合は、勾留決定が取り消されるので被疑者はただちに釈放となります。
また、勾留延長の期間が長すぎる場合、準抗告の申立をすることで、勾留延長決定自体が取り消されたり、あるいは延長期間が短縮されることもあります。
勾留期間中は、警察や検察官などの捜査機関が取調べを含む事件の捜査を行います。
起訴・不起訴の決定
3つ目は、起訴・不起訴の決定です。
捜査が終了した時点で、検察官が被疑者を起訴するか否かを決定します。検察官が起訴すると決定すれば、被疑者はこれより被告人となり刑事裁判に送られます。ラッシュによる薬物事件では、起訴された後は保釈を請求することができます。保釈とは、保釈金を裁判所に納めて釈放してもらう手続きです。
保釈の請求は、原則として請求を拒否する事由がない限り認められます
(刑事訴訟法第89条第1号〜6号)。これを権利保釈といいます。
また、権利保釈の要件がなくても、逃亡や罪証隠滅のおそれがなければ、裁量保釈により釈放されることもあります(刑事訴訟法第90条)。
保釈の条件が揃えば、裁判所から保釈決定とともに保釈保証金の金額が通知されるので、この金額を裁判所に納めることで釈放されます。保釈請求から保釈決定までは、数日を要することもあります。東京地裁では、原則、保釈請求をした日の翌々日に保釈されています。
裁判
4つ目は、裁判です。
起訴された後は、約1ヶ月前後で第1回公判の期日が決まります。公判が開始されれば、証拠などを提出しながら検察官が犯罪の事実を立証し、被告人が必要に応じてこれに反論する形で進められます。事件が十分に審理された後、最終的に判決が言い渡されます。
この判決に対して不服があるような場合は、被告人は控訴・上告することができます。
ラッシュの所持・使用では弁護士を頼ることがおすすめ
ラッシュの所持・使用事件で弁護士を頼ることをおすすめする理由は、以下の5つです。
- 逮捕が回避できる可能性が高まる
- 勾留期間が短縮される
- 接見禁止の解除の方向で動いてくれる
- 不起訴処分の期待
- 執行猶予の獲得が期待できる
1つずつ、見ていきましょう。
逮捕が回避できる可能性が高まる
1つ目は、逮捕を回避できる可能性が高まることです。
ラッシュなどの薬物事件では、薬物の売人との関係性や証拠隠滅が懸念されるので、一度でも事件が発覚すれば、原則として逮捕・勾留されます。しかし、早期の段階で弁護士が介入して警察や検察官と連絡をとり、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張すれば、逮捕されずに在宅捜査にしてもらえる可能性が高まります。
薬物事件を専門とする弁護士であれば、短時間で迅速な手配を行うことが可能です。
勾留期間が短縮される
2つ目は、勾留期間が短縮されることです。
ラッシュによる事件で逮捕された後、警察から検察官に送致されて勾留が決定すると、まず10日間勾留されます。しかし、この段階で弁護士に依頼して検察官や裁判所に対して勾留は不要であることを説得すれば、勾留期間が短縮され釈放となる可能性が高まります。
接見禁止の解除の方向で動いてくれる
3つ目は、接見禁止の解除に向けて動いてくれることです。
薬物事件では、被疑者または被告人は売人などとの関係性や証拠隠滅を防ぐために、弁護士以外との接触が禁止されることがあります。しかし、弁護士が裁判所に接見禁止の解除を申し立てることにより、家族との接見禁止を解除してもらえる可能性が高まります。
不起訴処分の期待
4つ目は、不起訴処分の期待ができることです。
ラッシュなどの薬物事件では、押収された薬物が微量であったり証拠が不十分なケースも多くあります。こうしたケースに対応できる薬物事件に強い弁護士であれば、経験と知見により迅速適切な手続きを行い、不起訴処分を獲得できることが期待できます。
執行猶予の獲得が期待できる
5つ目は、執行猶予が期待できることです。
ラッシュによる事件で逮捕・起訴され刑事裁判が行われた場合でも、弁護士が介入することで、裁判では執行猶予つき判決を得て実刑を回避することが可能になります。初犯で営利目的もなく、所持量もわずかで被告人自身が反省しているのであれば、執行猶予がつくことが多くなります。
しかし、営利目的があったり常習性が認められる場合は実刑になるケースが多くなる傾向があります。
ラッシュの所持・使用事件に強い弁護士を見極めるポイント
ラッシュの所持・使用事件に強い弁護士を見極めるポイントは、以下の2つです。
- 多くのラッシュ所持・使用事件の解決実績がある
- できることと費用を明確に提示してくれる
1つずつ、見ていきましょう。
多くのラッシュ所持・使用事件の解決実績がある
1つ目は、過去に多くの事件を解決してきた実績があることです。
刑事事件を扱う弁護士は多くいますが、薬物事件には特有の対応が必要になるため、弁護士を選ぶ際の基準は、過去に解決してきた薬物事件の実績があるかを確認することが重要になります。経験豊富な弁護士であれば今後の見通しの立った弁護が可能となるからです。
薬物事件は弁護士の初動が鍵を握っているので、迅速な行動と判断が行える弁護士に依頼するためにも、多くの解決実績のある弁護士を選びましょう。
できることと費用を明確に提示してくれる
2つ目は、依頼する前に弁護士ができることと費用を明確に提示してくれることです。
弁護士費用の内訳は、大別すると着手金と成功報酬金になります。着手金は弁護士に依頼する時と、裁判時に支払います。着手金と成功報酬金の相場は30万円前後になりますが、否認事件など争いのあるときは50~100万円に設定している事務所もあります。
弁護士事務所のホームページなどにわかりやすく明瞭に費用が提示されている、また弁護士がどのように動いてくれるのかがわかりやすい事務所を選びましょう。
以下は、春田法律事務所での弁護士費用をまとめたものです。参考にご覧ください。
着手金 | 成功報酬金 | |
すでに釈放されている | 30万円 | 不起訴 20~50万円 |
逮捕・勾留されている | 30万円 | 釈放・勾留短縮 20万円
不起訴 20~50万円 |
裁判 | 30万円 | 執行猶予 0~50万円 |
まとめ
今回は、薬物事件に詳しい弁護士が、ラッシュの基礎知識、ラッシュによる事件が生活に与える影響、ラッシュの所持・使用による事件の流れ、弁護士ができること、薬物事件に強い弁護士を見極めるポイントなどについて解説しました。
ラッシュは違法薬物として指定されており、所持・使用が発覚すれば薬物事件として逮捕・起訴されてしまう犯罪です。ただし、初犯で営利目的もなく少量であれば不起訴処分となることもあります。
初犯で逮捕を回避したい、不起訴処分にしたい、あるいは執行猶予を勝ち取りたいなど、
ラッシュによる薬物事件で逮捕された場合には、ただちに弁護士に依頼することをおすすめします。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設