• 薬物で執行猶予を得るために何をすべきか
  • 執行猶予の目的や意味は何か
  • 執行猶予期間中すべきことについて知りたい

薬物事件で逮捕されたら証拠隠滅や逃亡防止の観点から、多くの場合で実刑判決を受けることとなります。一度、麻薬事件をきっかけに逮捕・起訴されてしまえば、社会的信頼を失うことはもちろん、罪を償った後も定職へ就くことが困難となり、社会復帰に大きな影響を及ぼすこととなります。

また、家族に対してもいわれのないバッシングが飛び火することや、日常生活における嫌がらせを受けるケースも珍しくありません。自身や家族の生活を守るという意味でも、薬物事件においては執行猶予付き処分を勝ち取ることが重要です。

そこで今回は、薬物に強い専門弁護士が、薬物事件における執行猶予制度や、執行猶予付き処分獲得に向けた弁護士による弁護活動について解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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薬物使用等の執行猶予に関する制度とは

まずは、薬物事件における執行猶予制度の事例について、以下3つを確認しましょう。

  • 刑の一部執行猶予
  • 刑の全部執行猶予
  • 薬物事件における例

それぞれ、解説していきます。

刑の一部執行猶予

刑の一部執行猶予とは、平成28年6月1日より施行され、裁判所が3年以下の懲役又は禁錮刑の言渡しをする場合にその刑の一部の執行を猶予できる制度です。

薬物事件はその依存性の高さから、出所後も再び違法薬物に手を出してしまうケースが少なくありません。そのため一部執行猶予により、保護観察所による支援を通じて薬物依存症からの脱却や、社会復帰の後押しを行うことを目指します。

一部執行猶予制度の主な対象は、これまで刑務所で服役をしたことがない「初入者」です。しかし、いわゆる「累犯者」であっても裁判所の裁量によって一部執行猶予の言渡しが行われる場合があります。

裁判所において情状を考慮し、1年以上5年以下の期間で刑の一部の執行を猶予することができます。

刑の全部執行猶予

刑の全部執行猶予とは、犯罪の内容が軽微であり、本人に反省の色が見られる場合など、必ずしも現実的な刑の執行を必要としない場合に、一定期間の刑の執行猶予期間を設け、その期間を無事に経過した際に刑罰権を消滅させる制度です。

実刑判決を言い渡さず刑の全部執行猶予を行う意義は、被告人が更生し社会復帰するための機会を奪わないことにあります。

一度刑務所に収容されてしまえば、その後罪を償い出所したとしても、定職に就くことや社会復帰を行うことが困難となることから、社会内での更生を後押しすることを目的としています。

薬物事件における例

薬物事件は、その依存性から再犯率が高いことが課題とされています。

刑の一部執行猶予制度の目的は、薬物依存症を改善するために刑務所での懲役刑を受けると共に、医療機関や更生支援団体等によるサポートの元、社会復帰を後押しすることです。対象としては、主に再犯者に言い渡されるケースが多いです。

刑の一部執行猶予期間中は、必ず保護観察に付されることとなる他、「特別順守事項」として薬物再乱用防止プログラムを受けることを義務付けられます。

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薬物事件に対する執行猶予の目的と意味

薬物事件に対する執行猶予の目的と意味について、以下2点を説明します。

  • 更生の期待
  • 期間終了後は日常生活に戻る

それぞれ、解説していきます。

更生の期待

1点目は、更生の期待です。

薬物事件における執行猶予は、事件の悪質性や被告人個々の情状を踏まえた上で、社会生活を通じて被告人の更生が期待できる際に、早期の社会復帰を後押しすることを目的として言い渡されます。

薬物事件では多くの場合、証拠隠滅や逃亡防止の観点から実刑判決を言い渡されます。しかし、被告人が初犯である場合や医療機関での治療を受けて更生する意志がある場合は、「必ずしも現実的な刑の執行を行う必要がない」と判断されるケースもあります。

懲役刑や禁錮刑を回避することで、通勤や通学等のこれまで通りの生活を送ることが可能となる他、医療機関による適切な治療や自助グループ等への参加を通じて、早期に薬物依存症からの脱出を目指すことができます。

期間終了後は日常生活に戻る

2点目は、期間終了後は日常生活に戻ることです。

執行猶予付き処分でも、前科が付くことは免れ得ません。しかし、執行猶予期間中に別の犯罪を起こすことなく期間を満了することができれば、刑の執行が免除されます。

この場合、各市町村にある犯罪人名簿から名前を抹消されることとなり、医師や看護師等の一定の免許を受けるための制限もなくなります。

また、履歴書の賞罰欄や各種資格取得時の提出書類に前科を記載する必要もなくなることから、事件を起こす以前の日常生活を取り戻すことができます。

薬物事件において執行猶予付き処分を勝ち取ることは、被告人の早期の社会復帰に向けて大きな役割を果たすと共に、日常生活を守るためにも非常に意義のある制度だと言えるでしょう。

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薬物事件の執行猶予期間中に意識すべきこと

薬物事件の執行猶予期間中にはどのようなことを意識すべきか、以下3つのポイントについて解説します。

  • ストレスを溜めない
  • 更生プログラムへの参加
  • 家族のサポートを得る

それぞれ、解説していきます。

ストレスを溜めない

薬物事件の執行猶予期間中に意識すべきことの1点目は、ストレスを溜めないことです。

違法薬物は依存性が高く、自身の衝動をコントロールできず再び手を出してしまうケースは少なくありません。

しかし、執行猶予期間中に起訴されてしまうと実刑判決を下される可能性が極めて高くなり、社会復帰が遠のくこととなってしまいます。

趣味やボランティア活動等、薬物以外に自身が打ち込むことができるものを見つけ、適度なストレスの発散を心がけることが大切です。

更生プログラムへの参加

薬物事件の執行猶予期間中に意識すべきことの2点目は、更生プログラムへの参加です。

違法薬物を摂取したいという強い欲求は、自分自身の意志のみでコントロールすることは困難であり、更生プログラムを通じて依存症の克服を行うことが必要不可欠となります。

二度と薬物事件を繰り返さないためにも、必ず更生プログラムへ参加すると共に、場合によっては地方自治体が設置する相談窓口の利用や、自助グループ等のサポートを受けることも検討すべきです。

家族のサポートを得る

薬物事件の執行猶予期間中に意識すべきことの3点目は、家族のサポートを得ることです。

違法薬物との関係を断ち切り、執行猶予期間中に同様の犯罪を繰り返さないためには、本人の努力や意志が必要となることはもちろん、身近な存在である家族のサポートを得ることも重要です。

医療機関への付き添いや監督・生活基盤の整備等、再犯防止や円滑な社会復帰を目指すために家族が果たす役割は極めて大きいため、家族からのサポートは必要不可欠だと言えるでしょう。

薬物事件で執行猶予を得るために行う弁護活動

ここまで、薬物事件における執行猶予制度の事例、執行猶予の目的と意味、執行猶予期間中に意識すべきポイントについて見ていきました。

それでは、実際の薬物事件において、執行猶予付き処分を獲得するために弁護士はどの様なアドバイスやサポートを行ってくれるのでしょうか。具体的な活動について以下5点を紹介します。

  • 面会と取調べ対応
  • 贖罪寄付
  • 情状証人
  • 保釈請求
  • 薬物治療専門病院への入院

それぞれ、解説していきます。

面会と取調べ対応

1点目は、面会と取調べ対応です。

薬物事件を起こして逮捕された場合は、逃亡や証拠隠滅の防止の観点からその後長期間に渡り身柄の拘束を受ける可能性が高くなります。

身柄拘束中は、被疑者は家族とも自由に面会を行うことができないことはもちろん、会社や学校にも通うことができません。

早期に解放されたいという思いから、つい取調官による誘導尋問に流され、事実にない証言を行った結果、必要以上に重い刑を言い渡されてしまうことも珍しくありません。

弁護士であれば、逮捕直後から被疑者と自由に接見を行うことができ、事実に反する自白を行わない旨や、今後の取調べに臨む上でのアドバイスを行うことができます。

少しでも有利な状況を勝ち取るためには、早急に弁護士へと相談しなければなりません。

贖罪寄付

2点目は、贖罪寄付です。

薬物事件等の被害者のいない刑事事件では、示談や和解によって事件解決を図ることができないものの、贖罪寄付等の他の方法で反省態度を示すことで、被疑者の情状が良くなる可能性があります。

弁護士であれば、被疑者・被告人が少しでも有利な状況を勝ち取ることができるよう、適切なアドバイスの元に弁護活動を進めることができます。

情状証人

3点目は、情状証人です。

初犯の場合はもちろん、再度違法薬物に手を出してしまった被疑者や被告人であっても、それぞれに良い情状というものがあります。

たとえば、「本人がしっかりと反省をして更生の意志があること」、「家族の監督によって、更生プログラムへの参加や再犯防止が期待できること」、「定職に就いて社会復帰に向けた意欲があること」が挙げられます。

薬物事件に強い弁護士であれば、被疑者・被告人にとってどのような事実が有益となるかを把握しているため、個別の事案ごとに丁寧に情状を拾い上げ、処罰の軽減に向けた弁護活動が可能です。

保釈請求

4点目は、保釈請求です。

薬物事件においては、証拠隠滅や逃亡防止の観点から、逮捕後起訴されてしまう事例が大半を占めます。

勾留や懲役刑による身柄の拘束は、心身共に負担が大きいばかりでなく、職場や学校にも通えなくなるなど、社会生活においても悪影響を及ぼします。そのため、起訴後は早急に保釈金の納付を行い、身柄の解放を求めることがおすすめです。

薬物事件に強い弁護士に相談することで、執行猶予付き処分の獲得を目指すことはもちろん、万が一起訴された場合に備えて逮捕後から保釈請求を行うことができるように準備を行い、スピーディーな身柄の解放を目指すことができます。

薬物治療専門病院への入院

5点目は、薬物治療専門病院への入院です。

薬物事件のうち、所持や使用の罪で初犯の場合には、まだ違法薬物に対する依存性がそれ程高くない、と判断されるケースも珍しくありません。

起訴後早期に身柄の保釈を請求し、薬物治療専門病院でしっかりとした薬物依存症の治療を受けることで、再犯のケースでも執行猶予付き処分を勝ち取る可能性が高まります。

また、薬物事件において執行猶予付き処分を勝ち取るためには、入手ルートとの関係を断ち切ることや、社会復帰に向けた意志が見られるかという点も重視されます。

これまでの人間関係の断絶や、社会復帰後の生活環境の整備を行うという観点からも、薬物治療専門病院への入院は効果的です。

出典:関連記事 | 薬物事件に対して弁護士ができることは?迅速な解決に向けた対応策を解説

まとめ

今回は薬物事件に強い弁護士が、薬物事件における執行猶予制度や、執行猶予付き処分獲得に向けた活動について解説しました。

執行猶予付き処分は、早期の社会復帰を目指すと共に、自身やその家族の日常生活を守るという観点からも非常に大きな役割を果たします。

薬物事件で逮捕された場合には、早期に弁護士へと相談を行い執行猶予付き処分の獲得に向けた弁護活動を受けると共に、同様の犯罪を二度と繰り返さないために適切な医療支援を受ける必要があります。

弁護士であれば、被告人にとって有利となる情状を汲み上げた弁護活動を行うことができる他、医療機関やダルク等のリハビリテーション施設と連携した支援を通じて早期の社会復帰をサポートすることができます。

薬物に関わってしまったら、迷うことなく薬物事件に強い弁護士への相談をご検討ください。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設