薬物事件は懲役何年になる?弁護士ができることを徹底解説
薬物の所持・使用による懲役はどのくらいか
刑罰を科せられたらどのような影響があるのだろう
懲役を短くするために弁護士はどう動いてくれるのか

有名人が薬物所持・使用で逮捕されるなど、法律で規制されている麻薬に関する事件がメディアで報道されており、大きな問題となっています。薬物を所持していたらどれくらいの刑罰を科せられるのか、その重さを知らなければなりません。

本記事では、日本で禁止している薬物犯罪について、懲役を科せられる刑罰とその影響、刑罰を科せられない・軽くするための弁護活動について詳しく解説していきます。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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薬物で懲役を科せられる刑罰とは

まずは、薬物で懲役を科せられる刑罰について確認していきます。薬物で懲役を科せられる刑罰には、以下の6つがあります。

  • 覚醒剤取締法違反
  • あへん法違反
  • 大麻取締法違反
  • 薬機法(旧薬事法)違反
  • 毒物及び劇物取締法違反
  • 麻薬及び向精神薬取締法違反

1つずつ、見ていきましょう。

覚醒剤取締法違反

薬物で懲役を科せられる刑罰の1つ目が、覚醒剤取締法違反です。

覚醒剤取締法とは、「覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うこと」を目的とする法律です。覚醒剤の所持・使用などは覚醒剤取締法違反にあたります。覚醒剤取締法違反で摘発された場合、10年以下の懲役刑を受ける可能性があります。

また、他人に覚醒剤を売るなどの営利目的で覚醒剤を譲渡した場合、さらに重い刑罰を科される可能性が高いです。覚醒剤取締法の刑罰については、覚醒剤取締法第41条で規定されています。

あへん法違反

薬物で懲役を科せられる刑罰の2つ目が、あへん法違反です。

「あへん」とは、けしを原料とした薬物です。「あへん」という禁止薬物を吸引もしくは所持していると、あへん法違反にあたります。あへん法違反で摘発された場合は、7年以下の懲役刑を受ける可能性があります。みだりな栽培・採取・輸出入や営利目的での違反の場合は、さらに刑罰が重くなります。

大麻取締法違反

薬物で懲役を科せられる刑罰の3つ目が、大麻取締法違反です。

大麻取締法とは、大麻の所持・譲渡・譲受を禁止する法律です。大麻取締法違反で摘発された場合は、5年以下の懲役刑を受ける可能性があります。営利目的での違反の場合は刑罰が重くなります。

薬機法(旧薬事法)違反

薬物で懲役を科せられる刑罰の4つ目が、薬機法(旧薬事法)違反です。

薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。薬機法では、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品」のほか、指定薬物を規制しています。指定薬物は危険ドラッグに含まれることが多く、危険ドラッグとは「合法ハーブ」や「合法アロマ」などと呼ばれて売られている薬物です。従来の法律で禁止されている薬物と同等の有害性・危険性を持つ薬物が、厚生労働省の省令で禁止薬物として指定されています。

薬物について薬機法(旧薬事法)違反で摘発された場合は、5年以下の懲役刑、または500万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。合法ハーブだから大丈夫ということはなく、その類の薬物には手を出さないことが重要です。

毒物及び劇物取締法違反

薬物で懲役を科せられる刑罰の5つ目が、毒物及び劇物取締法違反です。

毒物及び劇物取締法とは、政令によって定められた毒物または劇物の製造・販売・貯蔵を規制します。毒物及び劇物取締法違反の例が、少年犯罪で多いシンナー吸引などです。違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、あるいは両方が科される可能性があります。

麻薬及び向精神薬取締法違反

薬物で懲役を科せられる刑罰の6つ目が、麻薬及び向精神薬取締法違反です。

麻薬及び向精神薬取締法とは、ヘロインやコカインなどの麻薬や向精神薬を規制します。対象となる薬物によって、刑罰の重さが異なります。麻薬の一種であるヘロインの場合、所持・譲渡・譲受すると、10年以下の懲役が科される可能性があります。営利目的での違反では、刑罰がより重くなります。

麻薬及び向精神薬取締法2条6号で規定された向精神薬を所持・譲渡すると、3年以下の懲役が科される可能性があります。向精神薬の場合も営利目的での違反では、刑罰がより重くなります。

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薬物で懲役を科せられることへの影響

ここでは、薬物で懲役を科せられることについて、以下3つの影響について説明します。

  • 日常生活への支障
  • 職を失う
  • 家族への影響

1つずつ、見ていきましょう。

日常生活への支障

薬物で懲役を科せられることへの影響の1点目が、日常生活への支障です。

懲役を科せられると、長期にわたり家を空けなければならず、職場・学校・自宅の近隣などに知れ渡り、日常生活に支障をきたす可能性が極めて高いです。薬物の使用は社会的信用を失うことにもつながりやすく、職場や学校への復帰も極めて難しいと言えます。

薬物は一度使用すると、その効果に虜になり何度も使いたくなるなど依存性の高いものが多いです。薬物によって依存性の高さは異なりますが、どれも止めることが非常に難しいと言われています。

一度薬物に手を出して懲役を科せられると、これまでの日常生活が一転します。

職を失う

薬物で懲役を科せられることへの影響の2点目が、職を失う可能性があることです。

多くの企業では、刑事事件で有罪判決となった時点で、社員を懲戒解雇とする規則があります。会社員ではなく自営業者の場合も、懲役を科されることで社会的信用が失墜し、廃業になる可能性があります。また、公務員においては懲役が科せられると、国家公務員法や地方公務員法で「失職」と規定されており、職を失います。

薬物で懲役を科せられると、職を失うことがほぼ避けられないといえます。

家族への影響

薬物で懲役を科せられることへの影響の3点目が、家族への影響です。

懲役を科せられた本人は、長期間刑務所に入ることになります。その間本人は仕事ができないため、家族へ経済的負担がかかる可能性が高いです。刑期を終えて出所したとしても、すぐに仕事ができるかどうかは不透明で、家族への負担が続きます。

また、薬物依存によって本人の身体や精神が壊れた場合は、家族関係が悪化してしまい、離婚など家族を失うことも十分に考えられます。

家族に迷惑をかけないためにも、禁止薬物には絶対手を出してはなりません。

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薬物で懲役の刑罰を科せられない・軽くするための弁護活動

ここまで、薬物の懲役で科せられる刑罰とその条件、影響について見ていきました。それでは、薬物で懲役刑を科せられない・軽くするためには、弁護士は何をしてくれるのでしょうか。弁護活動について、5点挙げてご説明します。

  • 逮捕回避
  • 接見
  • 釈放
  • 不起訴を目指す
  • 執行猶予

1つずつ、見ていきましょう。

逮捕回避

薬物で懲役刑を科せられないための弁護活動として、逮捕回避があります。

薬物犯罪で逮捕された場合、最初に身柄拘束されてその後勾留されるのが原則です。ただし、証拠隠滅の可能性がない場合や捜査へ協力する姿勢を見せることで、状況によっては逮捕を回避して、在宅捜査となる場合もあります。在宅捜査となった場合は、日常生活をしながら捜査が行われることになります。

薬物犯罪として逮捕された場合は、まず弁護士に相談しましょう。ただし、逮捕回避で在宅捜査となった場合でも、起訴される可能性があることに注意してください。

接見

薬物犯罪で警察に逮捕された場合、およそ3日間身柄を拘束され、取調べが行われます。

不起訴処分を目指すためにも、まずは弁護士との接見を求めることが重要です。弁護士との接見については、刑事訴訟法39条1項で規定されています。身柄拘束中に警察官の立会いなく、接見できるのは弁護士だけです。逮捕直後から弁護士が介入できれば、早期段階で被疑者から事実を確認できます。

弁護士との接見で適切なアドバイスを受けましょう。

釈放

身柄拘束された場合、72時間以内に勾留されるか釈放されるかが決まります。

勾留された場合は、逮捕から最長で20日間留置場で生活することになるため、まず弁護士との接見で、釈放される可能性があるかどうかを確認しましょう。

裁判所に準抗告と呼ばれる不服申立てを行うことで、釈放される可能性があります。準抗告とは、裁判官が下した決定に対して不服申立てを行うことです。そのためには弁護士から、証拠隠滅・逃亡の可能性がないことを主張することが必要です。

また、逮捕回避の際と同じく、釈放されたからといって捜査が終わるわけではありません。状況によっては釈放後も起訴される場合もありますので注意しましょう。

不起訴を目指す

薬物で懲役刑を科せられない弁護活動として、不起訴を目指すということがあります。

一旦逮捕されて不起訴処分となるのは、簡単なことではありません。しかし犯罪の状況や弁護活動によっては不起訴処分を獲得できる可能性もあります。情状酌量による起訴猶予を目指す、立証する証拠がない・証拠が弱い・被疑者に全く身に覚えのない容疑の場合には嫌疑不十分による不起訴を目指すことが大切です。

薬物の使用や所持で逮捕された場合は、薬物に強い弁護士に相談しましょう。

執行猶予

薬物犯罪の刑罰を軽くするための弁護活動として、執行猶予付きの判決を目指すということがあります。

初犯の場合は、一般的に執行猶予付きの判決を受ける傾向にあります。再犯の場合であっても、「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」により、一部執行猶予判決を受ける可能性があります。

しかし、初犯だから必ず執行猶予が付くわけではなく、事情によっては実刑判決を受ける場合もあります。被疑者が執行猶予付きになる可能性があるかについても、弁護士とよく相談しましょう。

まとめ

本記事では、薬物に関わる犯罪について、刑罰・懲役が科されることの影響や弁護活動を中心に解説しました。

法律で禁止されている薬物については所持・使用しないことが重要ですが、何らかの事情で警察に逮捕された場合は、まず弁護士に相談し、不利にならない対応を進めましょう。特に、被疑者が全く身に覚えのない場合は、薬物に強い弁護士に相談の上、不起訴処分を得られるよう行動することが大切です。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
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