指定薬物には何が含まれるのか
指定薬物の罪は何になるのか?
指定薬物の所持・使用で訴えられたので弁護士を依頼したい
指定薬物は、薬物乱用の社会情勢の変化に伴い、規制が厳しくなっています。脱法ドラッグや合法ハーブなどの名称に惹かれて所持・使用し、逮捕される人もいます。指定薬物に手を染めないためには、指定薬物の実態を理解し、犯罪に手を染めないように注意することが大切です。
そこで今回は、数多くの薬物犯罪事件を手掛けてきた実績のある専門の弁護士が、指定薬物の所持・使用で押さえるべき知識や、指定薬物事件に強い弁護士の選び方などについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
指定薬物の所持・使用での弁護士依頼をする前に押さえるべき知識
指定薬物の所持・使用での弁護士依頼をする前に押さえるべき知識を3つ解説します。
- 指定薬物とは何か
- 指定薬物が制定された背景
- 「HHC」の迅速な指定薬物化
1つずつ、解説します。
指定薬物とは何か
押さえるべき知識の1つ目は、指定薬物とは何かについてです。
指定薬物とは、中枢神経系の興奮や抑制又は幻覚の作用を有する蓋然性が高く、かつ人体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として、厚生労働大臣が指定するものをいいます。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」という)2条15項では、「指定薬物」について、下記のように定義されています。
中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚の作用(当該作用の維持又は強化の作用を含む。以下「精神毒性」という)を有する蓋然性が高く、かつ、人の身体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物(大麻、覚醒剤、麻薬及び向精神薬並びにあへん及びけしがらを除く)として、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定するもの
指定薬物及びこれを含有する物は、医薬品医療機器等法において、製造・輸入・販売・所持・使用・購入・譲り受け等が禁止されています。
指定薬物が制定された背景
押さえるべき知識の2つ目は、指定薬物が制定された背景についてです。
平成19年より脱法ドラッグの乱用問題への対応として、脱法ドラッグに含まれる様々な化学物質を薬事法で「指定薬物」として規制する対策が行われました。
規制開始当初は、32種類(31物質・1植物)が指定されました。しかし、その後は法規制が行われると新たなその類似物質が出現する「いたちごっこ」が繰り返されることになりました。
そこで厚生労働省は、従来のように個々の化学物質を1つずつ指定薬物に指定するのではなく、依存性・毒性を持つ薬物と構造が類似した様々な化学物質をまとめて指定薬物に指定して規制する「包括指定」を行うことにしました。
まず、平成25年3月に合成カンナビノイド系物質772物質が、続いて平成26年1月にカチノン系物質496物質が包括指定され、規制対象になっています。
指定薬物に対する処罰対象は、従来はその製造・輸入・販売・授与又は販売・授与の目的での貯蔵・陳列に限られていましたが、平成25年の薬事法の改正により、その所持・使用・購入・譲り受けにも拡大され、医療等の用途以外の使用も禁止となりました(平成26年4月1日施行)。
危険ドラッグの乱用による健康被害や、他者を巻き込む重大な死傷事故・交通事故等が社会問題化したことを受け、平成26年7月に薬物乱用対策推進会議において「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」が策定され、政府一丸となって危険ドラッグ対策を講じることにつながりました。
薬事法は、平成26年11月25日に、法律名が医薬品医療機器等法に改められています。さらに関税法においても、平成27年の改正により、指定薬物の輸入が新たに禁止されました(平成27年4月1日施行)。平成27年5月には、カチノン系物質840物質が包括指定され、規制対象となっています。令和4年3月17日現在では、2,405物質が指定薬物として規制されています。
「HHC」の迅速な指定薬物化
押さえるべき知識の3つ目は、「HHC」の迅速な指定薬物化についてです。
厚生労働省は、令和4年3月7日付けで、危険ドラッグに含まれる6物質を新たに「指定薬物」として指定する省令を公布し、令和4年3月17日に施行することとしました。
新たに指定された6物質は、令和4年3月4日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会指定薬物部会において、指定薬物とすることが適当とされた物質であるため、使用による健康被害等を防止するため、パブリックコメントの手続きを省略し、指定薬物として早急に指定することとなったのです。
指定された指定薬物の中には、通称名「HHC」(ヘキサヒドロカンナビノール)と呼ばれる物質も含まれています。
新たに指定薬物に指定されたHHCなどの物質は、輸入時に新たに発見された物質や海外で流通している物質です。
厚生労働省は、危険ドラッグが海外から輸入され、乱用されることのないよう、水際での輸入対策を強化していく構えです。また医薬品医療機器等法に基づく無承認無許可医薬品としての指導取締りを、インターネット販売も含めて強化していく方針であるとしています。
ちなみにHHCは「合法大麻」と表現されるほど、大麻の違法成分であるTHCと似た薬効があるといわれています。そのため大麻の合法化を求めている人たちの間では、HHCが大麻に代替する合法的なものとして流通していました。
そのような背景から、「HHC」はこれまでにない公布日から10日という速さで指定薬物となったのです。
指定薬物で適用される法律を弁護士が解説
指定薬物で適用される法律を3つ解説します。
- 医薬品医療機器等法
- 関税法
- 都道府県の薬物の濫用防止に関する条例
1つずつ、解説します。
医薬品医療機器等法
1つ目は、医薬品医療機器等法についてです。
医薬品の中には、毒性の強いもの、重い副作用を示すもの、習慣性や依存性を生じやすいものもあります。そのため、保健衛生上の危害の発生及び拡大を防止するために、危険度に応じて医薬品を分類し、取扱いを規制しなければなりません。
規制対象としては、毒薬、劇薬、習慣性医薬品、指定薬物などが定められています。指定薬物については製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲り受け・使用が禁止され(76条の4)、これに違反した場合の罰則は84条28号に定められています。最も罪が重くなるのは業として指定薬物を取り扱った場合で、83条の9に定められています。
関税法
2つ目は、関税法についてです。
関税法は平成27年の改正により「輸入してはならない貨物」に指定薬物が加えられました。これに違反した場合の罰則は、医薬品医療機器等法よりも重く定められています(平成27年4月1日施行)。実務的には、インターネットの海外通販闇サイトにおいて指定薬物を購入し、輸入する態様が多いようです。
都道府県の薬物の濫用防止に関する条例
3つ目は、都道府県の薬物の濫用防止に関する条例についてです。
薬物乱用防止条例が初めて制定されたのは東京都で、正式な条例名は「東京都薬物の濫用防止に関する条例」です(平成12年3月制定)。東京都に次いでは愛知県で「薬物の濫用の防止に関する条例」が施行されました。全国的にも、薬物の濫用防止に関する条例の制定が進んでいます。
指定薬物事件に強い弁護士を選ぶポイント
もし指定薬物事件に関わったり、巻き込まれたりした場合は、すぐに弁護士に相談をしましょう。ここでは、指定薬物事件に強い弁護士を選ぶときのポイントを4つ解説します。
- 迅速な対応をしてくれる
- 経験が豊富
- 精神的な支えになってくれる
- 最初から費用を教えてくれる
1つずつ、解説します。
迅速な対応をしてくれる
1つ目は、迅速な対応をしてくれるかどうかです。
逮捕された場合、最短での釈放を目指すためには一刻も早い対応が必要です。家族が依頼すれば、即日で弁護活動を開始し、被疑者の釈放に向けて手を尽くしてくれる弁護士であれば、心強いでしょう。
逮捕中の被疑者と家族は面会できません。面会できるのは弁護士のみのため、家族にとっても被疑者にとっても、非常に頼もしい存在となります。最大72時間の逮捕中、被疑者が今後のことについて弁護士と話し、いろいろと相談できるメリットは大きいと言えるでしょう。
他にも、弁護士は逮捕後の勾留阻止・勾留期間延長の阻止や短縮について、法的手続きを取ることができます。被疑者の釈放を勝ち取るためにこれらの手続きを迅速に取り、手を尽くす弁護士は、頼りがいがあると言っていいでしょう。
経験が豊富
2つ目は、経験が豊富かどうかです。
経験値・能力が高い弁護士は、新人弁護士に比べて、的確に事件の見通しができ、起訴・不起訴が見極められます。
また、経験をふまえて諦めず被疑者の釈放に向けて警察官・検察官・裁判官に働きかけてくれることが期待できます。
被疑者やその家族に対し適切にアドバイスすることも期待でき、被疑者が不起訴となる可能性も高まります。
精神的な支えになってくれる
3つ目は、精神的な支えになってくれるかです。
被疑者の家族の方は、逮捕中は被疑者と面会できないため、不安な気持ちになりがちです。弁護士直通の携帯電話に連絡できたり、LINEなどを活用したりしている弁護士事務所であれば、相談することで不安が和らげられるため、被疑者の家族にとって精神的な支えになります。
最初から費用を教えてくれる
4つ目は、最初から費用を教えてくれるかどうかです。
弁護士に相談・依頼した場合に必要な弁護士費用の目安は、おおむね以下のようになっています。この目安を参考にして、その詳細は弁護士に直接相談することをおすすめします。
相談料
相談料として30分5,000円が必要な弁護士事務所も少なくありませんが、無料にしている弁護士事務所もあります。
着手金・成功報酬
依頼内容によって、成功報酬が異なります。
<すでに釈放されている場合>
着手金:30万円(税込33万円)
不起訴の成功報酬金:20~50万円(税込22~55万円)
<逮捕・勾留されている場合>
着手金:30万円(税込33万円)
釈放・勾留短縮の成功報酬金:20万円(税込22万円)
不起訴の成功報酬金:20~50万円(税込22~55万円)
<公判(裁判)の場合>
着手金:30万円(税込33万円)
保釈の成功報酬金:10万~20万円(税込11~22万円)
執行猶予の成功報酬金:0~50万円(税込0~55万円)
なお、弁護士費用の支払いについては、分割を認めてくれる場合が多いようです。
まとめ
今回は、数多くの薬物犯罪事件を手掛けてきた実績のある専門の弁護士が、指定薬物の所持・使用で押さえるべき知識や、指定薬物事件に強い弁護士の選び方などについて解説しました。
指定薬物については、薬物乱用の社会情勢の変化に合わせて対象薬物が追加されるなど、規制が強化されています。指定薬物を所持・使用をした者は、各都道府県の薬物乱用防止条例で処罰されます。指定薬物の規制違反について不安がある方は、早めに専門の弁護士に相談してください。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設