- 大麻事件で逮捕されたあとどうなるのか?
- 大麻事件で逮捕されたら職場・学校にはバレるのか?
- 大麻事件で逮捕されても釈放・不起訴の可能性はあるの?
大麻事件により逮捕された場合、被疑者本人だけでなく、家族も解雇や退学となる恐れがあります。
そのような事態を避けるためには、どのような対応を取ればよいのでしょうか。
今回は、薬物事件に精通している実績のある弁護士が、大麻による逮捕について正しく理解するための基礎知識や、大麻事件での逮捕で弁護士ができることなどについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
大麻による逮捕とは?正しく理解するための基礎知識
大麻による逮捕とは、どのような行為に対して行われるのでしょうか。正しく理解するための基礎知識について2つ解説します。
- 大麻に関する法律
- 大麻は「所持」で逮捕されるが「使用」は処罰されない?
1つずつ解説します。
大麻に関する法律
1つ目は、大麻に関する法律についてです。
大麻に関する法律は、大麻取締法という法律です。大麻取締法では、主に大麻の所持、譲渡・譲受・栽培・輸出入が罰せられますが、使用(吸引)についての処罰規定はありません。それぞれの違反行為についての刑罰を見てみましょう。
大麻の所持・譲渡・譲受
大麻を所持し、譲り受け、または譲り渡した者は、5年以下の懲役に処せられます(大麻取締法24条の2第1項)。営利の目的で上記の罪を犯した者は、7年以下の懲役、または情状により7年以下の懲役および200万円以下の罰金に処せられます(大麻取締法24条の2第2項)。
なお、営利の目的があるないに関わらず、未遂罪でも処罰されます(大麻取締法24条の2第3項)。
大麻の栽培・輸出入
大麻を栽培し、輸出入した者は、7年以下の懲役に処せられます(大麻取締法24条1項)。営利の目的で上記の罪を犯した者は、10年以下の懲役、または情状により10年以下の懲役および300万円以下の罰金に処せられます(大麻取締法24条2項)。営利の目的があるないに関わらず、未遂罪でも処罰されます(大麻取締法24条3項)。
大麻は「所持」で逮捕されるが「使用」は処罰されない?
大麻は「所持」では逮捕されますが、「使用」では処罰されないこともあります。基礎知識の2つ目として、そのことについて詳しく解説します。
大麻は「所持」で逮捕されますが、そうでない場合もあります。大麻草全体に有害な物質が含まれているというわけではないからです。
幻覚作用をもたらす本体は、大麻に含まれているテトラヒドロカンナビノール(THC)と呼ばれる物質だといわれています。
そのため、大麻取締法が規制対象としている大麻は、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品に限っており、大麻草の成熟した茎や種子を持っていたとしても、所持にはあたりません。
また、大麻の「使用(吸引)」については、大麻の「所持」を伴うことが多いので、所持罪で対処することを想定しているものと思われ、使用(吸引)した時点で所持が疑われて、結果として所持罪で逮捕になるといえます。
大麻による逮捕につながる4つの要因
大麻事件ではどのようなきっかけで逮捕につながるのでしょうか。大麻による逮捕の要因について解説します。
- 職務質問からの発覚
- 家族・近隣住民からの通報
- 売人摘発から芋づる式
- 自首・自白
1つずつ解説します。
職務質問からの発覚
1つ目は、職務質問からの発覚です。
たとえば警察官が挙動不審者に職務質問をしたとき、所持品検査をした結果、大麻と思われる物品が見つかったとします。そのような場合はその場で簡易検査を実施し、大麻の陽性反応が出ると現行犯逮捕となります。その後、正式な薬物鑑定が行われます。
家族・近隣住民からの通報
2つ目は、家族・近隣住民からの通報です。
たとえば幻覚症状を呈している人を見つけた家族・近隣住民からの通報を受けて警察官がかけつけ、大麻を含む薬物の使用(吸引)が疑われたとします。そのようなときは警察官が捜索差押許可状の発付を得て家宅捜索を実施し、大麻が発見されると現行犯逮捕となります。
売人摘発から芋づる式
3つ目は、売人摘発から芋づる式に見つかるケースです。
売人が逮捕されると、売人の供述から、共犯者や譲り渡した相手の客が特定されることがあります。また、逮捕された売人の自宅の捜索で、パソコン・携帯電話・メモ・住所録等が押収され、共犯者や客の連絡先が明らかになることもあります。
売人が逮捕(摘発)されることにより、共犯者や複数の譲受者が特定され、その者らが芋づる式に逮捕に至ることも多いのです。
自首・自白
4つ目は、自首・自白です。
自首とは、犯罪事実または犯人が誰であるかが捜査機関に発覚する前に、捜査機関に対して自ら自分の犯罪事実を申し出て、その処分をまかせることをいいます。また自白とは、自分の犯罪事実の全部または主要部分を認める供述をいいます。
本人が大麻を持参して自首すると現行犯逮捕となります。また、本人が別の犯罪の取調べを受けていたときに、自宅に大麻を隠し持っている旨を自白することもあります。そのような場合、警察官が捜索差押許可状の発付を得て家宅捜索し、大麻が発見されると現行犯逮捕または後日逮捕(通常逮捕)となります。
大麻事件で逮捕されたあとの流れ
大麻事件で逮捕されたあとの流れについて3つ解説します。
- 勾留
- 起訴・不起訴の決定
- 起訴後の公判
1つずつ解説します。
勾留
大麻事件で逮捕されたあとの流れの1つ目は、勾留です。
大麻事件で逮捕された場合、自由が制限されるのは最大で72時間です。その後、引き続き身体を拘束するのが勾留です。
検察官から勾留の請求があると、裁判官は勾留質問を行って、その当否を審査します。捜査を進める上で身体の拘束が必要だと判断した場合には、勾留を決定し、10日間の拘束を認めます。
勾留を決定するための要件には、大麻事件を犯した疑いが強いことと、住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれかの懸念があることが必要です。
検察官は、原則としてこの10日間で起訴・不起訴の判断をしなければなりませんが、やむを得ない事情がある場合は10日を上限として勾留期間の延長を裁判官に請求できます。裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留期間の延長を決定できます。
起訴・不起訴の処分
大麻事件で逮捕されたあとの流れの2つ目は、起訴・不起訴の処分です。
検察官は、原則として10日間の勾留期間内で、あるいは勾留期間が延長された場合にはその勾留期間内で、起訴・不起訴を判断しなければなりません。検察官は、受理した大麻事件の被疑事実について的確な証拠に基づき有罪判決が得られる見込みが高い場合は、原則として起訴します。
一方、起訴しない場合には、被疑事実について「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの理由で、不起訴の処分をします。
起訴後の公判
大麻事件で逮捕されたあとの流れの3つ目は、起訴後の公判についてです。
公判の手続きは、検察官の起訴によって開始されます。主な大麻事件の法定刑は、主刑が罰金のみではないため、起訴された場合には裁判は必ず公開の法廷で行われます。
公判の手続きは、冒頭手続き・証拠調べ手続き・弁論手続き・判決宣告という流れで進められます。なお、流れについてはそれぞれ下記のような法律による根拠があります。
冒頭手続き
・被告人に対する人定質問(刑訴規則196条)
・検察官による起訴状朗読(刑訴法291条1項)
・被告人に対する黙秘権等の告知(刑訴法291条4項、刑訴規則197条1項)
・被告人および弁護人による罪状認否(刑訴法291条4項)
証拠調べ手続き
・検察官による冒頭陳述(刑訴法296条)
・検察官による証拠調べ請求(刑訴法298条、刑訴規則189条)
・被告人・弁護人の証拠意見(刑訴法326条1項、刑訴規則190条2項)
・証拠決定(刑訴規則190条1項)
・証拠調べの実施(証人尋問、証拠書類・証拠物の取調べ。刑訴法304条~306条)
・被告人・弁護人による立証、被告人質問(刑訴法311条)
弁論手続き
・検察官による論告・求刑(刑訴法293条1項)
・弁護人による弁論(刑訴法293条2項)
・被告人の最終陳述(刑訴規則211条)
判決宣告
・有罪判決(刑訴法335条)
・無罪判決(刑訴法336条)
・有罪であれば、執行猶予付きか実刑かの判決の言渡し(刑訴法43条1項・342条、刑訴規則34条・35条)。
大麻事件での逮捕で弁護士ができること
大麻事件での逮捕で弁護士ができることについて3つ解説します。
- 早期釈放の実現
- 不起訴処分・起訴猶予の獲得
- 執行猶予の獲得
1つずつ解説します。
早期釈放の実現
大麻事件での逮捕で弁護士ができることの1つ目は、早期釈放の実現についてです。
弁護士は、逮捕中の被疑者の早期釈放を目指し、まず司法警察員に面談を求め、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを訴えて、被疑者を釈放するように働きかけます。
逮捕に引き続き勾留となれば、身体拘束が長くなりますので、解雇や退学の危険が高まります。このような日常生活への影響は避けたいものです。
勾留に至る前の段階で釈放されることになれば、不利益を最小限にとどめることが可能です。そのため弁護士は、検察官に面談を求め、被疑者の出頭誓約書や家族の身元引受書、弁護士の意見書を提出して、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを強く訴え、勾留請求をしないように働きかけます。
また勾留請求がなされた場合には、担当裁判官に書面を提出し面談を求めます。そのうえで、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを訴えて、勾留決定をしないよう求めます。
不起訴処分・起訴猶予の獲得
大麻事件での逮捕で弁護士ができることの2つ目は、不起訴処分・起訴猶予の獲得についてです。
不起訴になる理由としては、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などがあります。
弁護士は、起訴される前に検察官に面談を求め、証拠不十分であることや社会内で更生させるのが望ましい旨を訴え、不起訴処分にするよう働きかけます。弁護士の活動によっては、不起訴処分・起訴猶予を獲得する可能性を高められます。
執行猶予の獲得
大麻事件での逮捕で弁護士ができることの3つ目は、執行猶予の獲得についてです。
大麻事件の罰則は、懲役刑・懲役プラス罰金刑のみとなります。大麻事件で執行猶予付き判決を得るためには、再犯しないことを強く訴えて裁判官に理解してもらう必要があります。
大麻事件では、特に初犯で個人使用目的であれば執行猶予がつく可能性が高い傾向にあります。そのため、弁護士と十分に相談して戦略を練り、反省の意を伝えましょう。そして、再犯防止策を検討し、裁判官に訴えてもらうような弁護活動をお願いしましょう。
まとめ
今回は薬物事件に精通している実績のある弁護士が、大麻による逮捕について正しく理解するための基礎知識や、大麻事件での逮捕で弁護士ができることなどについて解説しました。
大麻事件を犯して逮捕されてしまった場合、一番の心配は職場や学校に知られてしまわないかということでしょう。
家族が職場や学校に知られないようにすることは、かなり難しい対応になります。もしも大麻事件で逮捕されたら、最善の策として、経験を積んでいるプロの弁護士に相談し、その対応に委ねることをおすすめします。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設