- 大麻所持で再び逮捕された
- 大麻事件の再犯は実刑が確実なのか
- マリファナ事件の再犯でも不起訴を獲得したい
家族が大麻を再び所持して逮捕されたと心を痛めている方もいるでしょう。そして、大麻事件の再犯は実刑確実なのかもしれないが、それでも不起訴を獲得したいと願っている方も多いかも知れません。
そこで今回は、数多くの薬物事件を手掛けてきた実績のある専門弁護士が、大麻事件の再犯では実刑の可能性が高まるのか、大麻事件の再犯で実刑になりやすい行為とは何か、大麻事件の再犯パターンと実刑の可能性との関係、大麻事件の再犯で執行猶予を獲得するために弁護士への相談が望ましいことなどについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
大麻事件の再犯では実刑の可能性が高まるのか
大麻事件の再犯では実刑の可能性が高まるのかということについて、以下2つの観点から解説します。
- 執行猶予での更生のチャンス創出
- 再犯での執行猶予の要件
1つずつ、見ていきましょう。
執行猶予での更生のチャンス創出
1つ目は、執行猶予での更生のチャンス創出についてです。
大麻事件の再犯では、実刑の可能性が高まります。しかし、裁判所が執行猶予を重要な点と捉えており、これは、犯罪者を社会から隔離せず通常の社会生活を営ませながら、本人の更生を図り、再犯防止に万全を期すためです。
執行猶予を判断するには、犯人の年齢・性格・経歴及び環境、犯罪の動機・方法・結果、社会的影響や犯罪後における犯人の態度を考慮しますが、犯罪の抑制、犯人の改善・更生に役立つことも目的とされます。
そして、以下の点が多ければ多いほど、執行猶予の可能性が高まります。
- 1.犯行の動機に酌むべきものがあること
- 2.犯罪により生じた実害が皆無ないし軽微であること
- 3.犯人が若年者又は高齢者であること
- 4.その者がいなければ家族が生活できないような特別の事情があること
- 5.犯罪歴がないか古いものであること
- 6.犯罪後の改悛の情が顕著であること
再犯での執行猶予の要件
2つ目は、再犯での執行猶予の要件について解説します。
以下のような酌量すべき事情があるものであれば、再度の執行猶予となる可能性が高まります。
上記1~6に加えて、4つが要件に加わります。
- 7.犯罪が初犯であれば不起訴相当と考えられるもの、又は犯罪の情状が特に軽微で実刑を科す必要性に乏しいこと
- 8.犯行後の情状に特に酌むべき点があること
- 9.執行猶予中の行状が良好であること
- 10.更生の見込みが大きいこと
執行猶予期間中の再犯で実刑判決を受ければ、前刑の執行猶予が取り消され、合わせて服役することになるため、刑期が長期化します。また、懲役刑の執行終了後5年以内に再犯を犯して裁判を受け、懲役に処せられれば、執行猶予の余地はなく、累犯加重として刑期の上限が延び、刑も重くなる傾向にあります。
大麻事件の再犯で実刑になりやすい行為は?
営利目的を伴わなくても、大麻事件の再犯で実刑になりやすい行為について、3つ解説します。
- 譲渡
- 栽培
- 輸入
1つずつ解説します。
譲渡
1つ目は、譲渡です。
大麻を譲渡した者は、5年以下の懲役、営利の目的で大麻を譲渡した者は7年以下の懲役、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処せられます。
大麻を譲渡する者は、自分で使用(吸引)するのではなく、他人に譲り渡すことによって大麻の薬理作用による健康被害を拡散させ、またそれが営利目的を伴えば金銭的利益を得るために大麻の害悪を蔓延させるものであって、その刑事責任はいずれも重いと考えられています。
栽培
大麻を栽培した者は、7年以下の懲役、営利の目的で大麻を栽培した者は10年以下の懲役、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処せられます。
大麻を栽培する者は、大麻の誘惑に一時的に駆られたという域を逸脱し、大麻に対する依存性、親和性の強さを示すものであり、またそれが営利目的を伴えば金銭的利益を得るために大麻の害悪を蔓延させ、あるいは健康被害を拡散させようとするものであって、その刑事責任はいずれも重いと考えられています。
輸入
3つ目は、輸入です。
大麻を輸入した者は、7年以下の懲役、営利の目的で大麻を栽培した者は10年以下の懲役、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処せられます。
大麻を輸入した者は、わずかな量であっても逮捕・勾留される可能性は高いです。また、大量に輸入すれば営利目的が疑われ、拡散の可能性が考えられることから刑事責任を重く見られます。
なお、近年注目を集めているオイル等を含むCBD製品について、大麻草の成熟した茎や種子のみから抽出・製造されたCBD(カンナビジオール)を含有する製品については、大麻取締法上の大麻には該当しません。
大麻事件の再犯パターンと実刑の可能性
大麻事件の再犯パターンと実刑の可能性について4つ解説します。
- 不起訴後の再犯
- 執行猶予中の再犯
- 執行猶予終了後の再犯
- 実刑終了後の再犯
1つずつ、解説します。
不起訴後の再犯
1つ目は、不起訴後の再犯についてです。
不起訴処分がなされた場合、前歴として裁判所に証拠として提出される場合があります。しかし、不起訴裁定書が提出されるわけではなく、不起訴裁定の主文や理由が証拠から判明するものでもありません。
不起訴の裁定が起訴猶予・嫌疑なし・嫌疑不十分なのかが分かる場合もありますが、どれだけ証拠に基づいてその裁定がなされたのか疑わしい場合もあり、被告人に不利益に扱うべきでないと言えます。
そうすると、前歴は裁判手続きを経た前科と違い、重視すべきでないといえるので、不起訴後の再犯は初犯と同様に扱うことになり、実刑よりも全部執行猶予の可能性が高いと言えましょう。
執行猶予中の再犯
2つ目は、執行猶予中の再犯についてです。
執行猶予中という場合、大麻事件の執行猶予中なのか、他の薬物事件の執行猶予中なのか、全く異種事件の執行猶予中なのかによって影響が違ってきます。
大麻事件や他の薬物事件の執行猶予中の場合には、大麻を含む薬物に対する依存性・親和性が高いものとして、再度の執行猶予の可能性は低く、実刑の可能性が高いといえます。
他方、全く異種事件の執行猶予中の場合には、再度の執行猶予の要件を満たすようであれば、大麻事件では1年未満の判決の率が高いことを考慮すると、再度の執行猶予の可能性もあるといえます。
執行猶予終了後の再犯
3つ目は、執行猶予終了後の再犯についてです。
その再犯が執行猶予終了から相当の期間が経過し、すでにその悪性が消滅したものと評価できるかどうかが、実刑と執行猶予の判断を分けることになると言えます。その判断には、執行猶予の要件や再度の執行猶予の要件を参考にすることになります。全部執行猶予(保護観察付)の可能性もあります。
実刑終了後の再犯
4つ目は、実刑終了後の再犯についてです。
大麻事件の実刑終了後5年以内に再犯を犯して判決を受ければ、執行猶予の余地はなく、実刑になります。再犯が実刑終了後5年以内でも、判決言渡しが実刑終了後5年を過ぎていれば、法律的には執行猶予の可能性はあります。
その再犯が実刑終了後5年を過ぎ相当の期間が経過し、すでにその悪性が消滅したものと評価できるかどうかが、実刑と執行猶予の判断を分けることになると言えます。全部執行猶予の可能性もあります。
大麻事件の再犯で執行猶予を獲得するためには弁護士に相談がおすすめ
大麻事件の再犯で執行猶予を獲得するためには、専門弁護士に相談することをおすすめします。大麻事件の再犯では、被疑者であれ家族の方であれ、早い段階で弁護士を利用することが重要です。大麻事件の再犯の場合には、原則として起訴は免れないため、裁判になることを想定して弁護活動をしてもらうのが望ましいからです。
早くから弁護士が関われば、弁護士は、どのような弁護方針で裁判に臨むのかという戦略もたてやすくなり、被告人自身にとって効果的な情状立証に重点を置くことができます。
大麻事件の再犯で執行猶予を獲得するためには、何よりも被告人が反省し大麻を断ち切るという強い意思が必要です。そのためには、弁護士が、接見を通して、被告人がなぜ大麻事件を繰り返すのか、被告人自身のどこに原因があるからなのかなどの事件の背景を把握します。そして、裁判では、弁護士が、上記のような点を証拠や被告人質問で明らかにすることにより、最終的には執行猶予判決の獲得につなげます。
実刑を回避するためには、社会復帰後の環境が最も重要になります。被告人の身近にいる家族など、日常における監督者がいること、就労先が決まっていることなどが重要となります。弁護士は、裁判ではこれらを証人や書面で立証することになります。さらに、弁護士は、薬物専門の医療機関で治療を受ける予定であることや回復支援団体(ダルク等)に入所予定であることなどを立証することにより、被告人が大麻依存から脱却を図る意思である旨を明らかにします。
裁判では、裁判官に被告人を執行猶予にしても問題がないと納得してもらう必要があり、そのためには専門弁護士に相談することが望ましいと言えます。
まとめ
今回は、数多くの薬物事件を手掛けてきた実績のある専門弁護士が、大麻事件の再犯では実刑の可能性が高まるのか・大麻事件の再犯で実刑になりやすい行為とは何か・大麻事件の再犯パターンと実刑の可能性との関係・大麻事件の再犯で執行猶予を獲得するために弁護士への相談が望ましいことなどについて解説しました。
大麻に再び手を染めた場合、実刑は免れないものと諦めてはいるものの、やり直しの機会を得られたら、今度こそ更生したいと願っている方もいることでしょう。そのような被疑者を見守り、何とか立ち直らせ支えていきたいと、強く願っている家族の方も多いかも知れません。
大麻事件の再犯の場合、弁護士が早い段階から関わることで、被告人本人との信頼関係を築く中で情状立証が実を結び、裁判でも被告人に有利な結果が得られる可能性が高まります。大麻事件の再犯で逮捕された場合、被疑者本人はもとより、その家族の方も、今後の裁判に不安を抱いているのであればぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設