- 薬物で逮捕されるとどうなるのか
- 薬物や麻薬で逮捕された時はどうしたら良いか
- 弁護士は薬物事件での逮捕にどのような活動をしてくれるのか
日本の法律で規制されている薬物を使用していなかったとしても、所持や譲渡・譲受だけでも罪に問われます。軽い気持ちでこれらを行っていたところ、気がついたら逮捕されていたというケースも珍しくありません。このような場合は、不起訴処分や執行猶予付き判決となるように、いち早く弁護士とともに対策を行うことが大切です。
今回は、薬物事件に強い弁護士が、薬物に関する罪の疑いで逮捕する際の方法や、実際に逮捕されてからの流れ、薬物事件における有効な弁護活動について解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
薬物逮捕で問われる罪
罪に問われる薬物には、さまざまな種類があります。それぞれが異なる法律で取り締まられており、薬物に応じて課せられる刑罰の重さも多様です。
罪に問われる代表的な薬物と、それぞれの刑罰の目安は以下表の通りです。
法律 | 法律で罰せられる行為 | 刑罰(営利目的なし) | |
覚せい剤 | 覚醒剤取締法 | 使用・所持・譲渡・
譲受
|
10年以下の懲役 |
大麻 | 大麻取締法 | 所持・譲渡・譲受 | 5年以下の懲役 |
危険ドラッグ | 薬機法 | 使用・所持・製造・輸入・販売・授与・購入・譲受 | 3年以下の懲役、または情状により3年以下の懲役と300万円以下の罰金 |
ヘロイン | 麻薬取締法 | 製造・小分け・譲渡・譲受・交付・所持・使用・廃棄 | 10年以下の懲役 |
ヘロイン以外の麻薬 | 麻薬取締法 | 製造・小分け・譲渡・譲受・交付・所持・使用・廃棄 | 7年以下の懲役 |
向精神薬 | 麻薬取締法 | 製造・小分け・譲渡・譲受・交付・所持・使用・廃棄 | 3年以下の懲役 |
営利目的で薬物の所持や譲渡などを行った場合、上の表記載以上の刑罰が課されます。
上記表の通り、たとえ違法薬物を使っていなくても、所持しているだけでも罪に問われるということを押さえておきましょう。
薬物の逮捕方法
薬物に関する罪の疑いで逮捕する方法として、以下4点を説明します。
- 現行犯逮捕
- 後日逮捕
- 家宅捜索
- 供述による逮捕
それぞれ順番に解説します。
現行犯逮捕
薬物に関する罪の疑いで逮捕する方法の1点目に、現行犯逮捕があります。
現行犯逮捕とは、街中での職務質問などで違法薬物の所持や使用が認められ、その場で逮捕されることです。違法薬物の使用が疑われている場合、簡易検査を求められることもあります。当然ながら簡易検査で陽性反応が出た場合も、違法薬物の使用が認められるため、現行犯逮捕となります。
職務質問が行われた際の身分証明で薬物犯罪の前科が確認された場合、尿検査などの精度の高い検査の実施が求められます。このようにして再犯が発覚するケースが非常に多いです。
違法薬物の使用者は、薬物の強い興奮作用や依存作用が目立ち、警察に見つかるケースが非常に多いのが特徴です。街中で見つかった場合は簡易検査などによって、判定が行われます。
後日逮捕
薬物に関する罪の疑いで逮捕する方法の2点目は、後日逮捕です。
職務質問をした際に違法薬物の簡易鑑定ができない場合や鑑定結果が擬陽性の場合には、その場では現行犯逮捕はされず、科捜研の正式鑑定に回されます。
そして、正式鑑定の結果、違法薬物と判明した場合には、後日逮捕となります。
家宅捜索
薬物に関する罪の疑いで逮捕する方法の3点目は、家宅捜索です。
薬物所持・使用等が原因で家宅捜索が行われた際、自宅内に違法薬物が見つかればそのまま逮捕されます。
所持や使用を隠ぺいする可能性もあるため、基本的に疑いの高い人を放置することは許されていません。家宅捜索の甘さによって、薬物犯罪者を野放しにすることを防ぐためにも、家宅捜索時は、そのまま現行犯逮捕となることがほとんどです。
家宅捜索は、十分な内偵捜査の後に行われます。。証拠隠滅などの機会を与えないためにも、予告なしに来ることが通常です。
供述による逮捕
薬物に関する罪の疑いで逮捕する方法の4点目は、供述による逮捕です。
薬物事件が発覚する原因の多くは、薬物の流通ネットワークによる個人の特定です。本人が隠し通せていたとしても、流通ネットワークの中の1人が逮捕されることで、芋づる式に逮捕者が出ることが往々にしてあります。
警察や検察官は、薬物には無数の流通ネットワークがあることを理解しており、取り調べなどで、そのネットワークを聞き出すからです。聞き出したネットワークの中にいる者を逮捕し、取り調べの中で別のネットワークを探ることもしています。
供述による逮捕は、改めて警察が捜査したのちに、十分な証拠を基にして本人に逮捕状が出ます。
薬物で逮捕された後
薬物で逮捕された後の、判決が決まるまでの流れは下記の通りです。
- 逮捕〜身柄拘束
- 勾留決定判断
- 起訴・不起訴判断
それぞれのステップについて順番に解説します。
逮捕〜身柄拘束
逮捕後から身柄拘束されるまでの流れを説明します。
逮捕後、48時間以内に送検するかどうかの判断を行うため、警察から取調べを受けます。取調べを受けている間は、警察に身柄を拘束されるため、家族であっても自由な連絡等ができなくなります。この間、弁護士による接見を行い状況の確認、今後の対応などを相談することができます。
勾留決定判断
書類送検が行われた場合、24時間以内に勾留請求が必要かどうかの判断が下されます。
勾留とは、被疑者の逃亡などを防ぐために捜査機関の管理下に身柄を拘束することです。勾留が必要であると判断された場合は、検察官は裁判官に勾留請求を出し、正式に勾留が行われます。
起訴・不起訴判断
勾留が行われたら、勾留の最大期間である20日の間に起訴処分をするか否かの判断が行われます。
主に下記の要素をもとに、起訴・不起訴を判断します。
- 初犯か再犯か
- 家族等が十分な監督を行えるか
- 弁護活動が行われているか
- 被疑者の供述に正当性があるか
- 薬物依存から脱却する意思が見られるか
薬物犯罪の場合、大半が起訴処分を下されるものの、薬物依存から脱却するための環境や、本人の意志が固い場合は、不起訴となる可能性もあるのです。
弁護士に依頼することで、不起訴処分の獲得を目指すことができます。また、本人が犯行を否認している場合、証拠収集を行うなどして検察官に対して無罪だと働きかけます。
薬物で逮捕されそうになった場合に有効な弁護活動
薬物で逮捕されそうになった場合、最良の結果にするためにも、いち早く弁護士に弁護活動を行ってもらうことが大切です。薬物で逮捕されそうになった場合の弁護活動について、以下5点説明します。
- 逮捕の回避
- 釈放
- 接見禁止の解除
- 嫌疑不十分
- 執行猶予
それぞれ順番に解説します。
逮捕の回避
薬物で逮捕されそうになった場合に有効な活動の1点目に、逮捕の回避があります。
特に後日逮捕の場合、警察は確固たる証拠がないと逮捕できないため、弁護士に事前に依頼しておくことが大切です。弁護士は証拠隠滅を行う可能性が低いことや、証拠不十分であることを警察に主張します。
弁護活動によって、逮捕そのものを回避できる可能性があるのです。一度逮捕されてしまうと、本人の身柄拘束はもちろん、その後の社会生活に多大な影響を与えてしまいます。
逮捕の恐れがある場合は早急に弁護士に相談しましょう。
釈放
薬物で逮捕されそうになった場合に有効な活動の2点目に、釈放があります。
一度逮捕されると、勾留を含めて最大23日間身柄を拘束されるリスクがあります。勾留は警察や検察ではなく裁判官が判断するものです。裁判官が、勾留は不要と判断した場合は、勾留は行われません。つまり、逮捕されたからといって必ず勾留が行われるとは限りません。
弁護士に依頼することで、勾留の必要性がないことを適切な手続きの元、裁判官や裁判所に主張できます。本人は勾留を受けることなく釈放の可能性が出るため、身柄を長期間拘束されたくないのであれば、いち早く弁護士に相談するとよいでしょう。
接見禁止の解除
薬物で逮捕されそうになった場合に有効な活動の3点目は、接見禁止の解除です。
勾留された場合、証拠隠滅工作など防ぐために、家族とも自由に面談ができなくなることがあります。家族とも話せない状況下で、誘導尋問を含む取調べを受けると、本人はその状況から事実とは異なる自白や、疑われるような言動をとってしまうこともあります。そうなると、起訴される可能性が非常に高いと言えます。
弁護士は勾留期間中、被疑者の勾留解除や、接見禁止解除の活動を行ってくれます。家族等とも会話ができるようになるため、精神的な支えとなり、事実と異なる供述をするなどの最悪の事態を避けられるのです。
家族とは禁止であったとしても、弁護士との面談は自由に行えます。接見禁止や勾留の解除が行われなかったとしても、弁護方針の共有、誘導尋問への対策の相談ができるため、積極的に弁護士と相談する時間を設けましょう。
嫌疑不十分
薬物で逮捕されそうになった場合に有効な活動の4点目は、嫌疑不十分にすることです。
まったく身に覚えのない理由で逮捕されてしまうケースもあります。このような場合、弁護士から、嫌疑不十分であることを主張することが大切です。
しかし弁護士に依頼するタイミングが遅すぎると、検察や警察にとって有利になるような証拠をまとめられてしまいます。そのため、弁護が困難になるケースも少なくありません。
できるだけ早期段階で弁護士に依頼することで、最善の弁護方針と戦略を立てられます。検察側に有利な証拠を作られてしまう前に、弁護士への依頼をおすすめします。
執行猶予
薬物で逮捕されそうになった場合に有効な活動の5点目は、執行猶予です。
令和2年の統計によると、それぞれの薬物に関する取締法違反に対して、以下の割合で刑全体の執行猶予判決が出されています。
大麻取締法違反 | 約86% |
麻薬及び向精神薬取締法違反 | 約81% |
覚醒剤取締法違反 | 約36% |
情状などの影響は大きいものの、薬物事件では初犯の場合、大半で執行猶予が付けられます。
再犯や営利目的による薬物の所持等の場合は、適切な主張や弁護を行わなければ執行猶予が付かないことが多いです。薬物に強い専門弁護士が対応することで、執行猶予付きの判決が難しい場合であったとしても、執行猶予が付く可能性が高まるでしょう。
まとめ
本記事では、薬物関連で問われる罪やそれぞれの刑罰の目安、逮捕を疑われたときや実際に逮捕された際の対応方法について解説しました。
薬物関連の事件では、警察や検察側に有利となる証拠のみを揃えられてしまい、弁護が難しくなるケースが珍しくありません。このような事態を防ぐためにも、早めに弁護士に相談の上、適切な弁護を受けることをおすすめします。
最良の判決を獲得したい方は、ぜひ一度、薬物事件に強い専門弁護士にご相談ください。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設