覚醒剤は持っているだけで犯罪なのか
覚醒剤の関連で逮捕されるとどうなるのか
覚醒剤事件に強い弁護士の特徴を知りたい
覚醒剤に手を染めてしまった人は、いつ逮捕されるかと不安に駆られることでしょう。そして逮捕されれば、いつまで身柄を拘束され、その後どのような処分になるのか心配は尽きません。
また、逮捕されてしまった被疑者の家族も、被疑者のために覚醒剤事件に強い弁護士がいてくれれば心強いのにと、そのような弁護士の特徴を知りたいと望んでいる人もいるでしょう。
そこで今回は、数多くの薬物事件を解決に導いてきた実績のある弁護士が、覚醒剤事件での刑罰や、逮捕されたときに頼れる弁護士の特徴などについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
覚醒剤事件での刑罰を弁護士が解説
覚醒剤事件に適用される法律は、覚醒剤取締法という法律です。覚醒剤事件での刑罰について4つ解説します。
1つずつ、解説します。
所持
1つ目は、所持についてです。
覚醒剤を所持した者は、10年以下の懲役に処せられます(覚醒剤取締法41条の2第1項)。
覚醒剤の所持とは、人が覚醒剤を保管する実力支配関係を内容とする行為をいい、必ずしも覚醒剤を物理的に把握することは必要でなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあることをもって足ります。
使用
2つ目は、使用についてです。
覚醒剤を使用した者は、10年以下の懲役に処せられます(覚醒剤取締法41条の3第1項)。
覚醒剤の使用とは、覚醒剤をその用法に従って用いる一切の行為をいいます。
譲渡、譲受
3つ目は、譲渡・譲受についてです。
覚醒剤を譲り渡し、又は譲り受けた者は、10年以下の懲役に処せられます(覚醒剤取締法41条の2第1項)。覚醒剤の譲渡とは、所有権の移転又は処分権限の付与に伴う所持の移転、すなわち、相手方に対し、覚醒剤についての法律上又は事実上の処分権限を付与し、かつ、その所持を移転することをいいます。
覚醒剤の譲受とは、譲渡に対向するものであって、相手方から、覚醒剤についての法律上又は事実上の処分権限を付与され、かつ、その所持の移転を受けることをいいます。
輸入・輸出・製造
4つ目は、輸入・輸出・製造についてです。
覚醒剤を輸入し、輸出し、又は製造した者は、1年以上の有期懲役に処せられます(覚醒剤取締法41条1項)。覚醒剤の輸入とは、外国その他我が国の統治権が現実に行使されていない地域から、我が国の統治権が行使されている地域に覚醒剤を搬入することをいいます。
覚醒剤の輸出とは、我が国から外国その他我が国の統治権が現実に行使されていない地域に搬出するため、これら地域に仕向けられた船舶、航空機等の輸送機関に覚醒剤を積載することをいいます。
覚醒剤の製造とは、覚醒剤原料から科学的方法により覚醒剤を製造するという狭義の覚醒剤製造又は精製の他、覚醒剤に科学的変化を加え、又は加えないで他の覚醒剤にすること(製剤)、及び覚醒剤を分割して容器に収めること(小分け)をも含みます。
弁護士だから詳しい覚醒剤事件で逮捕されるケース
覚醒剤事件で逮捕されるケースについて3つ解説します。
1つずつ、解説します。
職務質問からの逮捕
1つ目は、職務質問からの逮捕についてです。
挙動不審な人物に警察官が職務質問をした際、所持品検査をした結果、違法薬物と疑われる物品が見つかったため、その場で簡易検査を実施し、違法薬物の陽性反応が出たときは、現行犯逮捕となります。
自宅での逮捕
2つ目は、自宅での逮捕についてです。
先に覚醒剤事件で逮捕されていた者が、その入手先の相手方を供述し、その相手方として名前が出た者が捜査機関に判明すれば、後日、警察官が捜索差押許可状の発付を得て家宅捜索し、捜索中に覚醒剤が発見されたときは、現行犯逮捕となります。
通報による逮捕
3つ目は、通報による逮捕についてです。
幻覚症状や急性中毒により病院に搬送され、搬送先からの通報により警察官が臨場し、覚醒剤の使用が疑われたため、強制採尿令状の発付を得て強制採尿手続きが取られ、正式鑑定をして尿に覚醒剤の含有が認められたときは、後日逮捕となります。
弁護士が解説する覚醒剤事件での逮捕
覚醒剤事件での逮捕について、逮捕の種類・逮捕後の流れを解説します。
逮捕の種類
逮捕の種類は以下の3種類です。
1つずつ、解説します。
通常逮捕
1つ目は、通常逮捕です。
通常逮捕とは、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときに、検察官、検察事務官又は司法警察職員が裁判官のあらかじめ発する逮捕状により被疑者を逮捕することをいいます(刑訴法199条1項)。
たとえば、Aが仕事仲間のBの隠していた覚醒剤を警察に持参して届け出た場合、Bに覚醒剤所持の嫌疑があるとしてBに対する逮捕状が発付され、この逮捕状によりBを後日逮捕する、という事案が該当します。
現行犯逮捕
2つ目は、現行犯逮捕です。
現行犯逮捕とは、誰もが、逮捕状なくして現行犯人を逮捕することをいいます(刑訴法213条)。現行犯人とは、
「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」
を意味します(刑訴法212条1項)。
たとえば、職務質問を受けた人が尿を任意提出し、その尿から陽性反応が出たことにより、覚醒剤使用の嫌疑で現行犯逮捕する、という事案が該当します。
緊急逮捕
3つ目は、緊急逮捕です。
緊急逮捕とは、検察官、検察事務官又は司法警察職員が、
「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに」
その理由を告げて被疑者を逮捕することをいいます(刑訴法210条1項)。
たとえば、Aが遊び仲間のBに覚醒剤を見せた後、覚醒剤をズボンの右前ポケットに入れてその場を立ち去ったということがあったとします。Bは警察に連絡し、Aの年齢、身長、体形、服装、ズボンの色、覚醒剤はズボンの右前ポケットに入っていることなどを告げます。そして、直ちに駆けつけた警察官が付近にいたAに対し、覚醒剤所持の罪の嫌疑が充分であること、及び急を要する状況があることを告げてAを逮捕する、という事案が該当します。
逮捕後の流れ
逮捕後の流れは、以下の通りです。
1つずつ、解説します。
逮捕
1つ目は、逮捕です。
まず、司法警察員は、逮捕した被疑者に対して
「直 ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え」ます。
そして、留置の必要があると判断した場合は、被疑者が身体を拘束されたときから48時間以内に、書類及び証拠物とともに被疑者を検察庁に連行して検察官に送致する手続きをとります(刑訴法203条1項)。
次に、検察官は、司法警察員から送致された被疑者を受け取ると、「弁解の機会を与え」、留置の必要があると判断した場合は、被疑者を受け取ったときから24時間以内、かつ最初に被疑者が身体を拘束されたときから72時間以内に、裁判官に被疑者の勾留を請求します(刑訴法205条1項・2項)。
勾留
2つ目は、勾留です。
裁判官は、検察官の勾留請求を受け、被疑者に対し勾留質問を行って、その当否を審査します。裁判官は、被疑者に罪を犯した疑いがあり、住居不定や罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがある場合、捜査の上で身柄の拘束が必要だと判断したときは、10日間の拘束を認める勾留決定をします(刑訴法207条1項・60条1項・61条)。
検察官は、事件の複雑・困難、証拠収集の遅延・困難、期間満了時における起訴・不起訴の
決定の困難など、やむを得ない事情がある場合は10日を上限として勾留期間の延長を裁判官に請求します。裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留期間の延長を決定できます(刑訴法208条)。
検察官は、原則として10日間の勾留期間内あるいは勾留期間が延長された場合にはその勾留期間内で、起訴・不起訴を判断する必要があります(刑訴法208条)。
起訴
3つ目は、起訴です。
検察官は、受理した覚醒剤事件の被疑事実について、的確な証拠に基づき有罪判決が得られる見込みが高い場合は、原則として起訴することになります。
刑事裁判
4つ目は、刑事裁判です。
刑事裁判は、検察官が裁判所に対し、被告人の処罰を求めて訴えを起こす「起訴」によって開始されます。
刑事裁判の手続きは、冒頭手続き・証拠調べ手続き・論告と弁論・判決宣告という流れで進められます。
冒頭手続きでは、裁判官が被告人に氏名などを質問し、被告人が検察官により起訴された者に間違いがないかどうかを確かめ、引き続き検察官が起訴状を朗読します。その後、裁判官が被告人に対し黙秘権などの権利を告げた上、被告人と弁護人から起訴状に対する言い分を聴きます。
証拠調べ手続きでは、まず、検察官が証拠によって証明しようとする事実を述べる冒頭陳述を行って証拠の取調べを請求し、これに対する被告人側の意見を聴いた上で、裁判所は、証拠の採否を決定し、採用した証拠を取り調べます。検察官の立証の後に、被告人側の立証が行われ、最後に被告人質問が行われます。
論告・弁論では、まず検察官が論告・求刑を行い、次いで弁護人が弁論を行い、最後に被告人が最終陳述を行います。
判決宣告では、裁判所が被告人に対し判決の言渡しを行います。
判決
5つ目は、判決です。
裁判所は、証拠を検討した結果、被告人が罪を犯したことに間違いがないと考える場合には、有罪判決を言い渡します。有罪判決の場合には、死刑や懲役・禁錮・罰金などの刑の種類とともに、懲役などの期間や罰金額が決まります。
有罪判決には、大別して実刑判決と執行猶予付き判決があります。また、執行猶予と同時に保護観察に付して、猶予の期間中、保護観察所の保護観察官や保護司の指導を受けるようにすることもあります。
他方、被告人が罪を犯したことに確信がもてない場合には、裁判所は無罪判決を言い渡します。
覚醒剤事件で逮捕されたときに頼れる弁護士の特徴
覚醒剤事件で逮捕されたときに頼れる弁護士の特徴について3つ解説します。
1つずつ解説します。
迅速な初動
1つ目は、迅速な初動です。
逮捕されている場合、最短での釈放を目指すためには迅速な初動が必要です。家族が依頼すれば、弁護活動を迅速に開始し、被疑者の釈放に向けて手を尽くしてくれる弁護士は、心強いものです。
逮捕中は家族でも被疑者と面会できません。面会できるのは弁護士のみです。家族が頼りにできるのは弁護士のみです。最大72時間の逮捕中、被疑者が今後のことについて弁護士と話し、いろいろと相談できるのが重要なことになります。
このように迅速な初動の弁護活動をする弁護士こそ、頼れる弁護士です。
過去に多数の解決実績がある
2つ目は、過去に多数の解決実績があることです。
経験が豊富な弁護士であれば、起訴・不起訴の見通しにも明るく、警察官や検察官に釈放に向けての働きかけも期待できます。
そして、そのような弁護士であれば、逮捕後の厳しい時間制限の中で早めに手を尽くすことにより、不起訴となる可能性が高まります。
このように過去に多数の解決実績のある弁護士こそ、頼れる弁護士です。
いつでも連絡が取れる
3つ目は、いつでも連絡が取れることです。
被疑者の家族を含めた多くの方は、法律の資格も知識もないため、逮捕中の被疑者に対する対応には困難を伴い心配な気持ちにもなることでしょう。心配になった場合に、事務所への電話だけでなく、弁護士直通の携帯電話やLINEなども教えてくれ、いつでも連絡が取れる弁護士は頼りがいがあります。
このようにいつでも連絡が取れる弁護士こそ、頼れる弁護士です。
まとめ
今回は、数多くの薬物事件を解決に導いてきた実績のある弁護士が、覚醒剤事件での刑罰や、逮捕されたときに頼れる弁護士の特徴などについて解説しました。
覚醒剤の誘惑に負け、覚醒剤に手を染めた場合には、逮捕を免れることは容易でなく、起訴される可能性があります。逮捕された被疑者はもちろん、その家族の方でも、今後のことに少しでも不安を感じているのであれば、一度専門の弁護士に相談してください。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設