薬物犯罪で捕まってしまった
薬物犯罪で逮捕されるとどうなるのか
薬物犯罪・麻薬事件に強い弁護士の特徴を知りたい
薬物犯罪で逮捕されてしまったら、本人のみならず家族にとっても大変なことです。そして、いつまで身柄を拘束され、薬物犯罪だけにどのような処分になるのか心配は尽きません。
また、逮捕された被疑者の家族にとって、薬物犯罪事件に強い弁護士を選びたいと思うのは当然なことですが、そのような弁護士の特徴を知りたいと望んでいる人もいるでしょう。
そこで今回は、多くの薬物犯罪事件を手掛けてきた実績のある専門弁護士が、薬物犯罪の内容や逮捕後の流れ、弁護士費用などについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
薬物犯罪を弁護士が解説
薬物犯罪について、薬物犯罪とは何か・犯罪となる薬物・薬物犯罪を取り締まる法を解説します。
薬物犯罪とは?
薬物犯罪とは、覚醒剤や大麻・指定薬物・危険ドラッグ等の薬物が、その濫用によって人の精神や身体を蝕み、その依存性や中毒症状としての精神異常状態に基づき新たな犯罪行動に出ることを言います。これらの薬物の取扱いを輸入・製造・所持等の各行為態様ごとに規制しており、このような各種規制に違反する犯罪を指します。
規制薬物等を使用すると、その薬理作用から幻覚・妄想等の精神障害に陥り、殺人や強盗等の凶悪な犯罪や重大な交通事故等を引き起こすことがあり、また、薬物の購入資金を得るための窃盗等の犯罪も発生しており、薬物が社会に与える影響は多大です。
犯罪となる薬物
犯罪となる薬物は、以下の7つです。
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- 覚醒剤
- 大麻
- コカイン
- MDMA
- 向精神薬
- 指定薬物
- 危険ドラッグ
1つずつ、解説します。
覚醒剤
1つ目は、覚醒剤です。
覚醒剤は、アンフェタミン、メタンフェタミン等であり、俗に「クスリ」「S(エス)」「スピード」「白」等と呼ばれており、主に無色又は白色の結晶性粉末です。
精神的依存性が強く、使用を繰り返すことにより幻覚や妄想が現れます。また中毒性精神病になりやすく、使用をやめても再燃(フラッシュバック)することがあり、大量に摂取すると死に至ります。
大麻
2つ目は、大麻です。
大麻は法律上、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品(成熟した茎や種子等を除く)のことで、乾燥大麻(「マリファナ」・茶色又は草色)や大麻樹脂(「ハシッシュ」「ガンジャ」、暗緑色の棒状又は板状)・液体大麻(「ハシッシュオイル」、暗緑色又は黒色の油状)があります。
知覚を変化させ、恐慌状態(いわゆるパニック)を引き起こすこともあり、濫用を続けると、学習能力の低下や記憶障害・人格変化を起こします。
コカイン
3つ目は、コカインです。
コカインは、南米を中心に生産されるコカの木の葉に含まれるアルカロイドであり、無色の結晶又は白色の結晶性粉末で、麻薬として規制されています。持続時間が短いため、短時間で繰り返し濫用される傾向があり、幻覚や妄想が現れ、大量に摂取すると全身けいれんを起こす他、死に至ります。
MDMA
4つ目は、MDMAです。
MDMAは、化学的に合成された麻薬であり、本来は白色結晶性の粉末です。しかし、様々な着色がされたり、文字や絵柄の入った錠剤やカプセルの形で密売されたりしています。俗に「エクスタシー」「X(バツ、エックス)」等と呼ばれることもあります。
セロトニンにより強く作用し、知覚を変化させ幻覚が現れることがあり、大量に摂取すると高体温になり死に至ります。
向精神薬
5つ目は、向精神薬です。
向精神薬は、中枢神経に作用して精神機能に影響を及ぼす物質で、その作用によって鎮静剤系と興奮剤系の2つに大別されます。睡眠薬、精神安定剤など医療用として用いられていますが、濫用されると精神及び身体へ障害を与え、依存により思考・感覚及び行動に異常をきたします。
指定薬物
6つ目は、指定薬物です。
指定薬物は、中枢神経系の興奮・抑制又は幻覚の作用を有し、かつ人体に使用された場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがある物として、厚生労働大臣が指定した物のことです。
指定薬物及びこれを含有する物は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律において、製造や輸入・販売・譲受け等が禁止されています。
危険ドラッグ
最後は、危険ドラッグです。
危険ドラッグは、覚醒剤や麻薬などの規制薬物と類似の効果にも関わらず、規制薬物の成分を含んでいない薬物を指し、「合法ハーブ」「脱法ハーブ」「お香」「バスソルト」「脱法ドラッグ」「違法ドラッグ」と多様な名称で呼ばれています。
製品によっては複数の化合物が含有しており、鎮静、興奮、幻覚など、薬理作用が異なる複数の薬物が混在していることも多いです。人が摂取した場合どのような作用を及ぼすのか予測が困難で、依存性もあるため、覚醒剤や大麻よりも危険であるとも言われています。
薬物犯罪を取り締まる法は?
薬物犯罪を取り締まる法は、以下の5つです。
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- 覚醒剤取締法
- 大麻取締法
- あへん法
- 麻薬及び向精神薬取締法
- 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律
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1つずつ、解説します。
覚醒剤取締法
1つ目は、覚醒剤取締法です。
覚醒剤取締法は、覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸出入・所持・製造・譲渡・譲受け・使用に関して必要な取締りを行うことを目的とする法律です。
大麻取締法</4>
2つ目は、大麻取締法です。
大麻取締法は、大麻の用途を学術研究及び繊維・種子の採取だけに限定し、大麻の取扱いを免許制とし、免許を有しない者による大麻の取扱いを禁止するとともに、違反行為を規定して罰則を設けた法律です。
あへん法
3つ目は、あへん法です。
あへん法は、医療及び学術研究の用に供するあへんの供給の適正を図るため、国があへんの輸出入・収納及び売渡しを行い、あわせて、けしの栽培やあへん・けしがらの譲渡し等について必要な取締りを行うことを目的とする法律です。
麻薬及び向精神薬取締法
4つ目は、麻薬及び向精神薬取締法です。
麻薬及び向精神薬取締法は、麻薬及び向精神薬の輸出入や製造・譲渡等について必要な取締りを行います。同時に、麻薬中毒者について必要な医療を行うなどの措置を講ずることなどにより、麻薬及び向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止し、公共の福祉の増進を図ることを目的とします。
国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律
5つ目は、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律です。麻薬特例法といわれる法律です。
この法律は、業として、つまり商売として反復継続的に薬物取引をしている場合に適用される法律です。
薬物犯罪での逮捕後の流れを弁護士が解説
薬物犯罪での逮捕後の流れを弁護士が3つ解説します。
- 逮捕
- 勾留
- 起訴
1つずつ解説します。
逮捕
1つ目は、逮捕についてです。
法律が認める逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の3種類があります。
通常逮捕は、検察官・検察事務官又は司法警察職員が、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときに、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、被疑者を逮捕することです。
緊急逮捕は、被疑者が死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに行われます。検察官・検察事務官又は司法警察職員が、その理由を告げて被疑者を逮捕します。
現行犯逮捕は、令状によらないで被疑者を逮捕することを指します。
勾留
2つ目は、勾留についてです。
被疑者は、逮捕された場合、最大72時間警察署の留置施設といった場所に留置されます。その間家族とは面会できず、面会ができるのは弁護士のみです。
弁護士は、勾留を回避するため、検察官に面談を申し入れます。あわせて身元引受人の身元引受書を提出し、勾留の理由や必要性がないことを訴え、勾留請求をしないように働きかけます。
起訴
3つ目は、起訴についてです。
検察官は、勾留期間の満了日までに起訴・不起訴の決定をしなければなりません。弁護士は起訴・不起訴の決定前に検察官に面談を申し入れ、被疑者が社会内で更生できる旨を訴えて起訴しないように働きかけます。
このように弁護士が介入することにより、事案によるとはいえ、不起訴の可能性が高まります。
薬物犯罪での逮捕・起訴される可能性を弁護士が解説
令 和2年版犯罪白書(令和元年の統計。以下「犯罪白書」)によれば、検察庁既済事件の身柄状況は、覚醒剤取締法違反の罪の場合、総数13,258人のうち逮捕された者は9,425人(71.1%)、逮捕されない者は3,833人(28.9%)でした。
大麻取締法違反の罪の場合、総数6,237人のうち逮捕された者が3,949人(63.3%)、逮捕されない者が2,288人(36.7%)となっています。
また覚醒剤取締法違反の罪の場合、起訴率が75.7%、不起訴率が24.3%、実刑率(一部執行猶予を含む)が62.9%、執行猶予率が37.1%でした。
大麻取締法違反の罪では、起訴率が50.6%、不起訴率が49.4%、実刑率(一部執行猶予を含む)が14.1%、執行猶予率が85.9%となっています。
犯罪件数の多い覚醒剤取締法違反の罪及び大麻取締法違反の罪に限っても、上記のように、逮捕されない者・不起訴で終わる者・執行猶予で終わる者がいることが分かります。
しかし、それぞれの犯罪の特性によって違いがあります。弁護士としては、逮捕を回避するため手を尽くし、不起訴処分、執行猶予判決、さらに無罪判決が得られるよう弁護活動をすることになります。
薬物犯罪に対して弁護士ができること
薬物犯罪に対して弁護士ができることを4つ解説します。
- 勾留の回避
- 勾留期間短縮
- 起訴の回避
- 本人・家族のフォロー
1つずつ解説します。
勾留の回避
1つ目は、勾留の回避についてです。
被疑者が逮捕されれば、検察官は最大72時間内に被疑者の勾留を請求するのが一般的です。
弁護士は、検察官に面談を申し入れ、勾留の理由や必要性のないことを訴え、勾留請求をしないように働きかけます。
また、検察官から勾留請求がなされた場合には、担当裁判官に面談を申し入れ、勾留の理由や必要性のないことを訴え、勾留決定をしないように働きかけます。そして、勾留決定がなされた場合には、勾留の取消しを求めて準抗告を申し立てます。
このような方策を講じることにより、検察官が勾留請求をしないで釈放したり、裁判官が勾留請求を却下したり、裁判所が勾留決定を取り消したりすれば、勾留を回避することにつながります。
勾留期間短縮
2つ目は、勾留期間短縮についてです。
勾留決定がなされても、勾留の理由又は勾留の必要性がなくなったことを主張して、勾留の取消請求をします。また、勾留期間延長決定がなされた場合には、その取消し又は変更を求めて準抗告の申立てをします。
その結果、裁判所が勾留を取り消したり、準抗告審が勾留期間延長請求を却下したり、勾留期間を変更したりすれば、勾留期間の短縮につながります。
起訴の回避
3つ目は、起訴の回避についてです。
検察官は、勾留期間の満了日までに起訴・不起訴の決定をします。弁護士は、検察官に面談を申し入れ、被疑者が薬物犯罪を認めている場合には、社会内での更生が可能である旨訴えて、起訴猶予の不起訴処分にするよう働きかけます。
薬物犯罪の嫌疑がなかったり、嫌疑が不十分のような場合には、その旨主張して不起訴処分にするよう検察官に働きかけます。
本人・家族のフォロー
4つ目は、本人・家族のフォローについてです。
被疑者は、逮捕された場合、その逮捕中は家族とも面会できず、外部との連絡もできなくなります。しかし、弁護士は、被疑者の逮捕中も自由に面会ができ、家族の状況を伝えたり、被疑者から家族への伝言を仲介したり、さらに着替え・書籍・現金を差し入れたりすることができます。
このように弁護士は、被疑者と家族の架け橋となって、被疑者や家族をフォローすることが可能なのです。弁護士によっては、事務所の電話番号だけでなく、弁護士の携帯電話やLINEなどを家族に知らせ、いつでも連絡が取れる状態にして、家族の心情に添った対応をします。
弁護士費用についても、どのくらいかかるのか不安な家族に対して、最初からホームページで明確に表示している事務所も少なくありません。
本人だけでなく、家族の不安にも寄り添った対応ができる弁護士がおすすめです。
まとめ
今回は、多くの薬物犯罪事件を手掛けてきた実績のある専門弁護士が、薬物犯罪の内容や逮捕後の流れ弁護士費用などついて解説しました。
取締りの対象となる薬物は多種多様で、どの薬物であれ誘惑に負ければ、取り返しのつかないことになることを自覚しなければなりません。
薬物犯罪で逮捕された被疑者や家族の方は、今後のことが心配になったときは、ぜひ一度専門の弁護士に相談することをおすすめします。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設