- 麻薬の一種であるMDMAを所持・使用していたことが発覚した
- MDMAの所持・使用で問われる罪は何か?
- MDMA事件で弁護士がしてくれることを知りたい
令和3年の厚生労働省の「薬物乱用対策」が公表した、薬物事犯の検挙人員は令和2年の実績で14,567人でした。この数字は前年よりも増加傾向です。特に若年層による乱用拡大が顕著となっています。その中でもMDMA等錠剤型合成麻薬の押収量は106,308錠と、前年から32,393錠増えており、大幅に増加傾向にあることがわかりました。
麻薬の一種であるMDMAの所持・使用が発覚した場合に罰則はどうなるのか、弁護士に依頼したいけど何をしてくれるのかわからない、という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、薬物事件に詳しい弁護士が、MDMAによる事件の基礎知識、MDMAによる事件は逮捕や起訴されやすいのか、MDMAによる事件で弁護士ができること、MDMAの所持や使用で頼りになる弁護士の探し方、必要な費用について解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
MDMAによる事件について弁護士が解説する基礎知識
まずはMDMAによる事件について、弁護士が基礎知識を解説します。
- MDMAとは?
- MDMA事件は麻薬及び向精神薬取締法で罰せられる
1つずつ、見ていきましょう。
MDMAとは?
MDMAとは、アンフェタミンと類似した化学構造を持つ化合物です。化学的に合成されたドラッグで所持や使用が禁止されています。MDMAは別名「タマ」または「エクスタシー」とも呼ばれ、共感作用が強い幻覚剤です。
MDMAは、視覚や聴覚を変化させる作用があります。そのため強い精神的依存性があり、一度始めると常習化するようになります。不安や不眠を引き起こし、乱用を続けると錯乱状態に陥ることになります。身体への影響も非常に強く、腎臓・肝臓などの内臓機能障害や記憶障害などの症状がでることもあります。
MDMAは、本来は白色の粉末ですが、多くは様々な着色がなされ、絵柄や文字などの刻印が入った錠剤型になっています。多くはヨーロッパで製造されていますが、最近では中東・南アフリカ・南米などでも製造されています。
MDMA事件は麻薬及び向精神薬取締法で罰せられる
MDMAは麻薬及び向精神薬取締法で規制されている「麻薬」に該当するため、これを所持・使用することは禁止されています(麻薬及び向精神薬取締法12条1項)。
MDMAの所持等の違反類型と罰則は、以下のようになります。
輸入・輸出・製造 (麻薬及び向精神薬取締法第65条第1項 第1号、第2項) |
1年以上10年以下の懲役(営利目的の場合は1年以上の有期懲役+500万円以下の罰金) |
製剤・小分け・譲渡・譲受・所持 (同法第66条) |
7年以下の懲役(営利目的の場合は1年以上10年以下の懲役+300万円以下の罰金) |
輸入・輸出・製造の予備行為 (同法67条) |
5年以下の懲役 |
輸入・輸出・製造の資金等を提供する行為 (同法68条) |
5年以下の懲役 |
譲渡・譲受の周旋 (同法68条の2) |
3年以下の懲役 |
MDMAによる事件は逮捕・起訴されやすいのか!?弁護士が解説
MDMAによる事件は、他の犯罪よりも逮捕・起訴されやすいのでしょうか?
MDMAは、小粒の錠剤であるため持ち運びが容易です。そのため証拠隠滅の恐れがあるので、一度でも嫌疑がかかれば逮捕・勾留される可能性が高くなります。また、身柄拘束をしないと薬物を再び使用する可能性があることも、逮捕・勾留となりやすい要因です。
MDMAで逮捕されてしまうと、ほとんどの場合は起訴されることになりますが、初犯所持量がごく微量、故意がないなどの情状がある場合は、不起訴処分となる可能性があります。
MDMAの所持等に規定されている罰則は懲役と罰金の併料のみなので、起訴されれば必ず公開の刑事裁判に出廷しなければなりません。また、有罪となれば最低でも懲役刑が科せられます。
しかし、MDMAの所持だけで起訴されたような場合は、刑事裁判で有罪判決が出されても、初犯であれば執行猶予がつく判決になる可能性が高いです。
MDMAによる事件で弁護士ができること
では、MDMAによる事件で弁護士に依頼した場合、実際に何をしてくれるのかについて見ていきましょう。MDMAによる事件で弁護士ができることは、以下の6つです。
- 逮捕の回避
- 勾留からの釈放
- 接見禁止の解除
- 不起訴
- 起訴猶予の獲得
- 執行猶予の獲得
1つずつ、見ていきましょう。
逮捕の回避
MDMAによる事件で弁護士ができることの1つ目は、逮捕の回避です。
MDMAなどの薬物事件では、証拠隠滅を防止するために事件が発覚すれば多くの場合、逮捕・勾留されます。しかし、被疑者が証拠を隠滅する可能性が少なく、捜査に素直に協力する姿勢を示せれば逮捕を免れることも可能です。
弁護士が警察に働きかけて逮捕を免れ、在宅捜査にしてもらえる可能性があります。在宅捜査になることで、仕事や学校などへの影響を減らすことになります。
勾留からの釈放
MDMAによる事件で弁護士ができることの2つ目は、勾留からの釈放です。
MDMAによる事件で逮捕された後の勾留期間は最長で20日間です。この勾留は、検察官が請求し、裁判官が決定します。被疑者が充分に反省しており、証拠隠滅・逃亡の恐れのないこと、再犯の可能性のないことを弁護士が主張して、準抗告という不服申立を行うことで釈放される可能性があります。
また、不服申立により釈放ができない場合でも、勾留期間短縮を申し立てることが可能になります。被疑者やその家族が単独で不服申立を行うことは難しく、勾留期間の短縮・勾留からの釈放を求めるのであれば弁護士に介入してもらいましょう。
薬物事件に強い弁護士であれば、検察官や裁判官に対して勾留は必要ないことを説明することで、早期釈放される可能性が高まります。
接見禁止の解除
MDMAによる事件で弁護士ができることの3つ目は、接見禁止の解除です。
MDMAの所持等で逮捕され勾留されている場合、勾留期間中は弁護士以外は接見禁止である場合が多いので、家族などの近親者とも接見できないことがあります。
しかし、弁護士が働きかけることにより、少なくとも家族との接見が可能になります。接見が可能になれば、家族とも今後の対応などについて話し合うことができ、事件解決も早まります。
不起訴
MDMAによる事件で弁護士ができることの4つ目は、事件を不起訴にすることです。
MDMAなど麻薬所持・使用の容疑をかけられていても、それを立証する証拠が弱い場合や全く身に覚えのない容疑をかけられている場合は、嫌疑不十分あるいは嫌疑なしと主張して、事件を不起訴にできることもあります。
早期の段階で薬物事件に強い弁護士に依頼し戦略をたてることで、検察官が嫌疑不十分として起訴を断念する結果に持ち込める可能性が高まります。
起訴猶予の獲得
MDMAによる事件で弁護士ができることの5つ目は、起訴猶予の獲得です。
起訴猶予とは、被疑事実が明白な場合であっても、被疑者の性格・年齢・境遇・犯罪の軽重や情状・犯罪後の状況などから、検察官が訴追しなくてよいと判断する不起訴処分です。
弁護士が起訴猶予にしやすい材料を揃えて検察官に提示することで、起訴猶予となる可能性が高まります。
執行猶予の獲得
MDMAによる事件で弁護士ができることの6つ目は、執行猶予の獲得です。
執行猶予とは、判決で刑を言い渡す際に被告の犯情を考慮して、法令の定める一定期間、刑事事件を起こさなければ刑罰権を消滅させるという制度です。
薬物事件の場合は、初犯かつ営利目的でない限り、適切に弁護をすることで執行猶予がつく可能性は高くなります。
MDMAで事件になったらすぐに弁護士に相談
MDMAで事件になったらすぐに弁護士に相談することが重要です。では、MDMA事件に強い弁護士はどのようにしたら見つけることができるのでしょうか?
MDMA事件に強い弁護士の特徴は、以下の2つです。
- 薬物事件を解決した実績が多数ある
- 密なコミュニケーションをとってくれる
1つずつ、見ていきましょう。
薬物事件を解決した実績が多数ある
1つ目は、薬物事件を解決した実績が多数あることです。
MDMA事件に強い弁護士は、薬物事件の多数の解決実績があります。弁護士に依頼する際は、MDMAを含めた薬物事件の解決実績がどれくらいあるのかを確認しておくことが大切です。弁護士は全ての事件の取り扱いをしますが、それでもやはり、それぞれに専門分野や得意分野があります。
過去に薬物事件を担当し、解決実績が最低でも10件以上ある弁護士であれば、
過去の解決実績から適切なアドバイスが期待できます。
また、刑事事件では初動の早さが事件解決の鍵になります。解決実績の多さで弁護士の行動が変わるので、数十件の経験がある弁護士に依頼するようにしましょう。
密なコミュニケーションをとってくれる
2つ目は、密なコミュニケーションをとってくれることです。
密なコミュニケーションをとってくれることも、薬物事件に強い弁護士の特徴です。薬物事件で逮捕された場合、身柄を拘束・勾留されるので誰もが不安になります。また被疑者の家族も、どのような状況になっているのか詳細がわからずに心配になるでしょう。
連絡先として、弁護士事務所の電話番号だけではなく、担当弁護士の直通の電話番号・LINEなどを教えてくれ、密に連絡をとってくれる弁護士に依頼しましょう。密なコミュニケーションをとってくれる弁護士であれば、サポートする家族の不安にも寄り添ってくれます。
事件の状況をこまめに進捗報告してくれる弁護士であれば心強いでしょう。
MDMAの所持・使用で頼りになる弁護士の依頼に必要な費用
MDMAの事件で弁護士に依頼する場合に必要となる費用は、状況により以下のような相場になります。
着手金 | 成功報酬金 | |
すでに釈放されている | 30万円 | 不起訴 20~50万円 |
逮捕・勾留されている | 30万円 | 釈放・勾留短縮 20万円 不起訴 20~50万円 |
裁判 | 30万円 | 保釈 10~20万円 執行猶予 0~50万円 |
まとめ
今回は、薬物事件に詳しい弁護士が、MDMAによる事件の基礎知識・MDMAによる事件は逮捕や起訴されやすいのか・弁護士ができること・頼りになる弁護士の探し方・必要な費用について解説しました。
MDMA事件は被害者のいない犯罪であることなどから、証拠が不十分で不起訴となることが比較的多い傾向にあります。特に、初犯の事件であれば、営利目的ではない限り執行猶予がつく可能性は高いです。
弁護士と綿密な戦略を立てることで不起訴や執行猶予を勝ち取ることなども可能になるので、MDMA事件が発覚した場合は、ただちに解決実績が豊富な弁護士に依頼してサポートを受けましょう。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設