- 指定薬物の裁判ではどのようなことが行われるのだろう
- 裁判に向けて備えるべきことについて知りたい
- 指定薬物の裁判で弁護士に依頼すれば何してくれるのだろうか
指定薬物事件で逮捕されたケースでは、多くの方の場合勾留による慣れない環境や取り調べを受ける中で、不安な日々を過ごすこととなります。職場や学校に事件を知られた場合には、自身の社会的信頼の喪失を招くばかりでなく、家族や身近な方の人生に、大きな影響を及ぼすことも珍しくありません。
一方、公判手続の流れや裁判に臨む上での留意点を理解することで、取り調べや裁判に余裕を持って臨むことができるのはもちろん、弁護士と共に執行猶予付き処分や減刑などの獲得を目指すことができます。
そこで今回は、薬物事件の対応実績が豊富な弁護士が、指定薬物事件における公判手続の流れ、裁判に向けて備えるべきこと、指定薬物事件の裁判で受けることができる弁護活動について詳しく解説いたします。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
指定薬物の裁判で行われる公判手続
まずは指定薬物の裁判で行われる公判手続について、以下3点を説明します。
- 冒頭手続
- 証拠調べ手続
- 弁論手続
それぞれ解説します。
冒頭手続
1点目は、冒頭手続です。
刑事事件の第一審公判手続の中で取られる冒頭手続の4つの流れを以下に説明します。
1.人定質問
人定質問とは、裁判官が被告人に対して氏名、生年月日、職業、本籍などを質問することによって、被告人が検察官によって起訴された者に間違いがないかを確認することを指します。
刑事事件においては、法廷に出廷した人物と検察官が起訴した人物が別人であってはならないことから、冒頭手続の中でも重要な手続であるといえます。
2.起訴状朗読
起訴状朗読とは、検察官が起訴状を朗読することにより、審判の対象を明らかにすることを指します。ここでいう起訴状には、何を目的として検察官が起訴を行うか、裁判が始められるかが記載されています。
3.黙秘権の告知
黙秘権の告知とは、裁判官が被告人に対して、黙秘権などの被告人に与えられた権利について説明することを指します。ここでいう黙秘権とは、憲法第38条に保障された権利であり、被告人は、公判廷において終始沈黙することもできる他、個々の質問について陳述を拒む権利も保障されています(供述拒否権)。
憲法により保障された権利をより確実にすることを目的として、公判廷においては、冒頭手続の場面で裁判官が被告人に対して、その権利を説明することと定められています。
4.被告事件に対する陳述
被告事件に対する陳述とは、弁護人と被告人から起訴状に記載された事実についてその言い分を聞くことで、事件の争点を明らかにすることを指します。
証拠調べ手続
2点目は、証拠調べ手続です。
刑事事件の第一審公判手続の中で取られる証拠調べ手続の4つの流れを、以下にご紹介します。
1.冒頭陳述
冒頭陳述とは、冒頭手続の終了後の証拠調べ手続の始めに行われる手続を指します。ここでは、検察官が証拠によって証明すべき事実を明らかにします。
また、これに続いて、弁護人または被告人が裁判所の許可を得て冒頭陳述を行うケースもあり、裁判員裁判などでは、弁護人も必ず冒頭陳述を行うことと定められています。
2.検察官の立証
検察官の立証とは、証拠調べ手続の中で行われる検察官による立証を指します。刑事事件においては、「疑わしきは被告人の利益に」との言葉があるように、まずは検察官が証拠取調べを請求します。裁判所はこれに対する被告人・弁護人の意見を聴いた上で個々の証拠の採用を決定し、取調べを行うこととなります。
ここでいう証拠には、証拠物、証拠書類、証人の3種類が想定されており、証拠物であれば“展示”、証拠書類であれば“朗読”、証人であれば“尋問”による方法で、取り調べが行われます。
3.被告人側の立証
被告人側の立証とは、証拠調べ手続の中で検察官の立証の後に行われる証拠の取り調べを指します。薬物事件において公訴事実の存在に争いがない場合には、犯行及んだ経緯や反省態度、再犯防止策など、被告人にとって有利な情状が存在することの証明のために行われます。
裁判所は、検察官の立証のケースと同じように、被告人側が請求した証拠を採用するか決定し、法的手続に則り取調べを行います。
4.被告人質問
被告人質問とは、刑事裁判において、裁判官、検察官、弁護士からの質問に答えることを指します。被告人には、憲法第38条により黙秘権が保障されていますが、被告人自らが答える場合であれば質問を行うことができます。
被告人質問では、被告人の表情、態度、話の内容などから事件についての心証を形成することに大きな役割を果たすことから、ほぼ全ての刑事裁判における第一審公判手続の中で実施されることとなっています。
弁論手続
3点目は、弁論手続です。
証拠調べ手続が実施された後、以下の流れで弁論手続が行われることとなります。
1.検察官の論告・求刑
検察官の論告・求刑とは、法律的な問題や事実関係を元に、被告人にどのような刑を科すべきか意見を述べることを指します。
刑事裁判においては、検察官に有罪の立証責任を負っていることから、証拠調べの結果を踏まえて、被告人が有罪となる理由や科すべき刑罰についてアプローチすることとなります。
2.弁護人の弁論
弁護人の弁論とは、検察官の論告・求刑と異なった観点から法律的な問題や事実関係について意見を述べることを指します。
刑事事件では、罪を犯した被告人には様々な背景や経緯があることから、その理由となる証拠を示すことで被告人に下される刑罰の軽減を目指すことを目的として行われます。
3.被告人の最終陳述
被告人の最終陳述とは、刑事事件の手続の中で最後に被告人に対して与えられる意見陳述の機会を指します。証拠調べにおける被告人質問の中で弁護人による証言の誘導はありますが、自身の意見を法廷でしっかりと主張することができる唯一の機会となります。
量刑裁判であれば、事件や罪を認め反省の色を示すこと、2度と同じ過ちを起こさないことを宣誓することで裁判官に対して良い心証を与えられる可能性があります。
指定薬物の裁判に向けて備えるべきこと
ここからは、指定薬物の裁判に向けて備えるべきことについて、以下4点を説明します。
- 感情的にならない
- 反省の態度を示す
- 全てに答えなくても良い
- 弁護士への依頼
それぞれ解説します。
感情的にならない
備えるべきことの1つ目は、感情的にならないことです。
裁判においては、検察官による反対尋問の中で厳しい指摘を受けることがしばしばあります。検察官による尋問を受けていると、つい感情的になってしまい言い合いになることがありますが、裁判官の前でヒートアップすると悪い心証を植え付けてしまい、その後の発言の信用性が低下することがあります。
一方、反対尋問に対して余裕を持ってスマートに対応することができれば、裁判官に良い心証を与えられる場合もあります。ムッとすることがあっても、冷静な対応を行うように心掛けることが重要です。
反省の態度を示す
備えるべきことの2つ目は、反省の態度を示すことです。
薬物事件における裁判においては、被告人に反省の態度が見られるかということが判決に大きな影響を及ぼすこととなります。被告人が話す内容はもちろん、証言の際の態度や話しぶり、見た目などを元に裁判官は被告人に反省の態度が見られるかを判断する傾向にあります。
少しでも裁判官の心証を良くするために裁判官からどう見られているかを意識した振る舞いを行うことが重要です。
全てに答えなくても良い
備えるべきことの3つ目は、全てに答えなくても良いことです。
被告人には、憲法第38条により黙秘権が保障されていることから、自身にとって不利となる質問や検察官による反対尋問など、その全てに答える必要はありません。たとえば薬物事件においては、過去の薬物使用歴や余罪について聞かれた場合、正直に答えてしまった場合罪が重くなるケースがあるため、黙秘権を行使することが考えられます。
苦し紛れの発言や支離滅裂な回答を行ってしまえば裁判官の心証が悪くなるケースも珍しくないため、キッパリと黙秘したほうが良い場合もあります。
弁護士に依頼する
備えるべきことの4つ目は、弁護士への依頼です。
指定薬物事件において少しでも有利な結果を勝ち取るためには、薬物事件の対応実績が豊富な弁護士へと依頼することが重要です。
薬物事件の対応実績が豊富な弁護士であれば、逮捕後すぐの身柄の解放や、不起訴処分、執行猶予付き処分、減刑の獲得に向けた弁護活動を行うことができます。
また、取り調べや裁判に臨む上での注意点などもアドバイスを行うことができるため、自身にとって不利な証言を防ぐことができる可能性があります。
万が一、自身やその家族が逮捕されてしまった場合には、一刻も早く弁護士に相談することが重要です。
指定薬物の裁判で弁護士ができること
ここまで、指定薬物の裁判で行われる公判手続と、裁判に向けて備えるべきことについて説明しました。それでは指定薬物の裁判では弁護士は何をしてくれるのでしょうか。ここでは弁護活動について、以下2点を挙げて説明します。
・質問リハーサル
・不利な質問対応
それぞれ解説します。
質問リハーサル
1つ目は、質問リハーサルです。
証拠調べ手続の中で行われる被告人質問は、弁護士による質問(主尋問)からスタートします。そのため、弁護士が事前に質問をまとめておき、裁判に向けて被告人と質問に対する受け答えのリハーサルを行うことができます。
薬物事件の対応実績が豊富な弁護士であれば、裁判官に対して良い心証を与えるような受け答えや、後述する検察官からの反対尋問に向けたアドバイスを行うことができます。
被告人が勾留されている場合には、留置施設でのリハーサルを行うこともできるため、裁判に向けてできる限り早く弁護士にご相談ください。
不利な質問対応
2つ目は、不利な質問対応です。
被告人質問では、弁護士から被告人に対して不利な点を質問しなければ、裁判官に対して悪い心証を与えてしまうこととなります。
また、検察官による反対尋問で厳しい指摘を受ける前に、弁護士から不利な点について質問することでフォローを行うことができます。
事前の質問リハーサルの中で、被告人にとって不利な質問に対する受け答えや、裁判に臨む上での心構えなどもアドバイスすることができるため、裁判官に対して良い心証を与えられる可能性が高まります。
指定薬物の裁判に向けて早急に弁護士への依頼を
今回は、薬物事件の対応実績が豊富な弁護士が、指定薬物事件における公判手続の流れ、裁判に向けて備えるべきこと、指定薬物事件の裁判で受けることができる弁護活動について解説しました。
薬物事件をきっかけとして逮捕されてしまった方の多くは、勾留による慣れない環境や取り調べを受ける中不安な日々を過ごすこととなりますが、公判手続の流れや裁判に向けて備えるべきことを理解することで、執行猶予付き処分や減刑などの獲得に向けて余裕を持って裁判へと臨むことができます。
薬物事件の対応実績が豊富な弁護士であれば、取り調べや裁判に臨む上でのアドバイス、依頼者にとって有利な結果の獲得に向けた弁護活動を行うことができます。
万が一の場合には、迷うことなく専門弁護士にご相談ください。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設