• 向精神薬の使用で現れる症状について詳しく知りたい
  • 向精神薬の使用は罪に問われるのだろうか
  • 使用を疑われたらどうしたら良いのだろう

精神安定剤や睡眠剤をはじめとした向精神薬は、大麻や覚醒剤などの違法薬物に比べて入手難易度が低いことから、ちょっとした好奇心や日常生活の不安から逃れることを目的として使用してしまう方が後を絶ちません。

しかし、安易に向精神薬を使用してしまえば依存症や副作用に悩まされるばかりでなく、懲役や罰金刑などの罪に問われることもあり、場合によっては薬物を不正に入手するために詐欺や殺人などの重大犯罪に手を染めてしまう可能性も否定できません。

そして、薬物事件で起訴された場合、自身の社会的信頼の喪失を招くばかりでなく、家族や身近な方の日常生活にまで悪影響を及ぼす危険性があることから、早急に弁護士による弁護活動を受ける必要があります。

そこで今回は、薬物事件の対応実績が豊富な弁護士が、向精神薬の使用で現れる症状、向精神薬の使用が罪に問われる可能性と条件、向精神薬の使用を疑われたときに取るべき対応について詳しく解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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向精神薬の3つの使用ケース

まずは、向精神薬の使用ケースについて、以下3点を説明します。

  • 治療
  • 処方量を守らない乱用
  • 不正流通による使用

それぞれ解説します。

治療

1つ目の使用ケースは、治療です。

一般的に向精神薬は、うつ病や不安障害などの精神疾患の治療を目的として処方されます。向精神薬は一度使用すれば、クセになってしまうという誤った認識を持つ方もいます。しかし、医師が処方した量を守って服用すれば精神疾患の改善が期待できます。日本のみならず、世界的にも向精神薬の処方が増加傾向にあるといわれています。

処方量を守らない乱用

2つ目の使用ケースは、処方量を守らない乱用です。

うつ病や不安障害などの治療を目的として向精神薬を服用していたものの、なかなか効果を実感できず、焦りや不安から、決められた処方量を超えて服用してしまう方も少なくありません。また、好奇心や日常生活に対する不安から、向精神薬を服用してしまうケースも近年問題となっています。

処方量を守らずに向精神薬を服用してしまうと、後述する情緒不安や不眠などの副作用を引き起こすばかりでなく、最悪の場合には死に至るケースもあるため、注意が必要です。

不正流通による使用

3つ目の使用ケースは、不正流通による使用です。

向精神薬の依存症となってしまった方で、病院・診療所・薬局などの許可を受けた取扱い業者以外から、不正に密売されているものを購入して使用してしまうケースが報告されています。

また、医師による営利目的での譲渡や、自分や取引先のみの利益を守ろうと図る医薬品ブローカーによる横流し事件なども近年問題とされており、場合によっては、あなた自身が向精神薬事件の当事者となることもあります。

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向精神薬の使用で現れる症状

ここでは、向精神薬を使用することで現れる症状について説明します。

向精神薬は、麻薬・大麻・覚醒剤など以外で、中枢神経に作用して精神の働きに影響を及ぼす薬物のことを指します。代表的なものに精神安定剤・睡眠剤・鎮静剤などがあります。

もともとは、イライラや不眠などの症状を改善するために処方されるもので、服用するためには医師の処方箋が必要となる他、医師などに対しても盗難防止に向けた厳格な管理体制が求められています(鍵付きロッカーや保管庫での保管など)。

精神安定剤・睡眠剤・鎮静剤を使用したときに現れる症状の例をそれぞれ紹介します。

精神安定剤

精神安定剤を必要としない方が使用した場合には、「文字が書けない」「言語不能」「全身の筋肉が正常に動かない」「ショック状態に陥り何も考えることができなくなる」などの極めて危険な症状が現れる場合があります。

また、抗うつ剤を使用した場合には、「自分は何でもできる」といった一時的な錯覚を起こしますが、情緒不安・食欲不振・不眠・興奮・性器萎縮などのすさまじい副作用が伴います。精神安定剤は耐性が強く、気軽な気持ちで使用してしまえば、あっという間に薬物依存症に陥ってしまう危険性があります。

睡眠剤

睡眠剤を乱用すると、眠ることなく日常通りの行動を行ってしまいます。

薬の効果が続いている間の出来事は記憶に残ることなく、夢を見続けているような状態になります。過度な服用を行ってしまえば、脳の呼吸中枢が破壊され死に至るケースがある他、アルコールと共に摂取すれば強烈な抑制作用が発生し、死亡・昏睡する危険性もあります。

近年、睡眠障害の方が眠れないとの理由でアルコールと共に睡眠剤を摂取し、転倒・転落などの事故を起こすケースが多く報告されており、極めて危険な状態です。

鎮静剤

鎮静剤を乱用した場合には、一時的に穏やかな気分やくつろいだ気持ちになることができますが、足元のふらつきや舌のもつれなどの症状が現れる他、多量に服用した場合には死に至るケースもあります。

服用し続けた場合には、当初の量では効果を感じられなくなる程依存性が強く、突然使用をやめてしまうと不眠・不安感・痙攣などの禁断症状が伴います。

鎮静剤を乱用した方の特徴として、「仕事の無断欠勤」「家庭内の役割の放棄」「家族や身近な方との関係の悪化」などを巻き起こすケースが多く、日常生活に大きな影響を及ぼす危険性を孕んでいます。

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向精神薬の使用は罪に問われるのか?

向精神薬を使用した場合に罪に問われる可能性について、以下2点を説明します。

  • 使用は規制されていない
  • 不正な使用で罪に問われる可能性もある

それぞれ解説します。

関連記事:麻薬及び向精神薬取締法 | e-Gov法令検索

使用は規制されていない

「麻薬及び向精神薬取締法」では、向精神薬の使用そのものは規制されていないため、原則として使用しただけで罪に問われることはありません。

ただし、向精神薬を医療目的外で譲渡し、又は譲渡する目的で所持していた場合には、3年以下の懲役が処せられます。

また、金銭を得ることを目的とした悪質性の高いケースでは、5年以下の懲役及び100万円以下の罰金が科せられる場合もあります。

不正な使用で罪に問われる可能性もある

向精神薬は、極めて厳格な管理や取り扱いが求められることから、不正な手段で入手しようとすれば罪に問われる可能性があります。

具体的には、密売されている向精神薬を購入した場合や、処方せんを偽造して不正に向精神薬を入手した場合には、罰金刑などが科せられるケースがあります。

関連記事:向精神薬で無罪になるには?薬物に強い弁護士が徹底解説!

向精神薬使用で罪を問われる条件

向精神薬使用で罪に問われる条件について、以下2点を説明します。

  • 輸入出・製造・小分けに関わっている
  • 営利目的や密売との関係がある

それぞれ解説します。

輸入出・製造・小分けに関わっている

1つ目の条件は、輸入出・製造・小分けに関わっていることです。

向精神薬をみだりに、輸出入・製造・小分け・製剤した場合には、「麻薬及び向精神薬取締法」違反の罪に問われ、5年以下の懲役に処せられます。

営利目的や密売との関係がある

2つ目の条件は、営利目的や密売との関係があることです。

向精神薬を金銭を得ることを目的として、輸出入・製造・小分け・調剤した場合には、「麻薬及び向精神薬取締法」違反の罪に問われ、7年以下の懲役及び200万円以下の罰金が科されます。

日常生活へと及ぼす影響力の大きさも考慮すると、向精神薬事件において科せられる刑罰は決して軽いものではありません。

万が一、あなたやその家族が向精神薬事件に巻き込まれてしまった場合には、一刻も早く弁護士へと相談を行い、無罪や執行猶予付き処分、減刑などの獲得に向けた弁護活動を受けなければなりません。

関連記事:向精神薬による裁判とは?要因と必要な弁護活動について徹底解説!

向精神薬使用で疑われたら何をすべきか

ここまで、向精神薬の使用で現れる症状についてと、向精神薬の使用が罪に問われる可能性・条件について解説しました。それでは、向精神薬の使用を疑われた場合にはどのような対応を行うべきなのでしょうか。ここでは、向精神薬の使用を疑われたときに取るべき対応について、以下3点を挙げて説明します。

  • 無実の証明
  • 使用を認めている場合
  • 薬物事件の実績豊富な弁護士への依頼

それぞれ解説します。

無実の証明

1つ目は、無実の証明です。

実際には向精神薬を使用していない、自身が知らない間に向精神薬を所持・服用させられていたケースなどでは薬物事件は成立せず、弁護士と共に無罪を勝ち取るための証拠収集を行うこととなります。

向精神薬の使用を疑われた場合には、根拠となる理由があることから、その理由を確認した上で証拠収集を行うことが重要となります。具体的な事例を挙げると、取り調べ中に行われた尿を採取するときの手順に問題がなかったか、証拠の捏造や捜査中に証言の誘導が行われていないかなどを調査した上で、検察官・裁判官に対して正しい主張を行います。

そして、無実の場合には、取り調べに臨む上で、事前に弁護士との打ち合わせを行うことも重要です。残念ながら、早期に身柄の拘束から逃れたいがために事実とは異なる証言をしてしまう方もいます。一度行った証言を覆すことは非常に困難であり、思わぬ形で揚げ足を取られてしまう場合もあります。

弁護士であれば、勾留期間中も警察官の立ち会いなしで安心して打ち合わせを行うことができるため、無罪の獲得に向けてしっかりと事前準備を行うことができます。

使用を認めている場合

2つ目は、使用を認めている場合にすべきことを説明します。

依頼者が向精神薬事件への関与を認めている場合には、反省の態度と更生に向けた意思表示を行うと共に、執行猶予付き処分や減刑などの獲得に向けた弁護活動を行うこととなります。

たとえば、向精神薬の不正流通に関与している人物との交友関係を断ち切ること、専門クリニックへの入院や自助グループへの参加、治療プログラムの紹介などが挙げられます。

また、依存性の高い向精神薬を自身の意思のみで断ち切ることは困難であり、更生に向けて家族や身近な方のサポートが必要不可欠となります。

専門機関による薬物治療や家族サポートなどを受けられる環境にあることを主張することで、不起訴処分などを勝ち取る可能性を高められると共に、依頼者の1日も早い社会復帰を後押しすることができます。

薬物事件の実績が豊富な弁護士への依頼

3つ目は、薬物事件の実績が豊富な弁護士へ依頼することです。

実際に向精神薬事件に関与してしまった場合でも、不起訴処分・執行猶予付き処分・減刑などの獲得・身柄の解放を目指して早期に弁護士へと依頼することが重要です。

薬物事件においては、被疑者・被告人が罪を認めているか、前科歴の有無、事件の悪質性(営利目的の有無や薬物の所持量)はあるかなど、諸般の事情を考慮して起訴・不起訴の決定や判決が下されることとなります。

また、起訴前であれば最大で23日間、起訴後であれば数か月〜1年単位で勾留による身柄の拘束を受けることとなるため、通勤や通学を行うことができず職場や学校を辞めざるを得ないケースが往々にしてあります。

薬物事件の対応実績を豊富に持つ弁護士であれば、取調べに向けたアドバイスのみならず、依頼者にとって有利な結果の獲得に向けた弁護活動を行うことができます。

自身やその家族の日常生活・社会的信頼を守るためにも、是非、弁護士への依頼を前向きにご検討ください。

向精神薬使用で疑われたら早急に弁護士への依頼を

今回は、薬物事件の対応実績を豊富に持つ弁護士が、向精神薬の使用で現れる症状、向精神薬の使用が罪に問われる可能性と条件、向精神薬の使用を疑われたときに取るべき対応について解説しました。

向精神薬は、麻薬や覚醒剤などよりも手軽に入手できることから、誰もが薬物事件の当事者となる可能性を秘めています。

安易に使用してしまえば依存症や副作用に悩まされるばかりでなく、日常生活や人間関係の面で悪影響を及ぼすことや重大犯罪に巻き込まれてしまうケースも考えられます。

万が一、あなたやその家族が向精神薬事件の当事者となってしまった場合には、迷うことなく早急に弁護士へとご相談ください。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設