- 家族が覚醒剤取締法違反で裁判が決まった
- 覚醒剤取締法違反の裁判前にしっておくべきことは?
- 覚醒剤取締法違反で逮捕された被疑者の家族でも弁護士に依頼できるの?
家族が覚醒剤取締法違反で裁判になる場合、弁護士に頼みたいと思う方は多いのではないでしょうか?しかし、家族が覚醒剤で捕まった場合に弁護士に何を頼めるのか、具体的に知っている方は少ないでしょう。
そこで今回は、刑事事件を数多く解決してきた刑事事件専門の弁護士が、家族が覚醒剤取締法で裁判になることが決まった場合に裁判前に知っておくべきこと、被疑者の家族でも弁護士に依頼できるのか、といった点について解説します。
覚醒剤による裁判の前に家族が知っておくべき基本事項
覚醒剤による裁判の前に家族が知っておくべき基本事項について、弁護士が解説します。以下の2つのポイントが重要になります。
- 覚醒剤取締法違反の罰則
- 覚醒剤取締法違反の起訴率
それでは、1つずつ見ていきましょう。
覚醒剤取締法違反の罰則
1つ目は、覚醒剤取締法違反の罰則について解説します。
覚醒剤取締法違反が禁止している行為は、以下の4つがあります。
- 覚醒剤の使用
- 覚醒剤の所持
- 覚醒剤の譲渡・譲受
- 覚醒剤の輸出入(営利目的有、営利目的無)
上記の覚醒剤取締法違反の行為をすると、以下の罰則が科せられます。
・覚醒剤の単純な使用・所持・譲渡・譲受の場合は10年以下の懲役
(営利目的がある場合、1年以上の有期懲役、500万円以下の罰金の併科があり)
・輸出入・製造の場合、1年以上の有期懲役
(営利目的がある場合、無期又は3年以上の懲役、1,000万円以下の罰金の併科があり)
覚醒剤取締法違反の罰則を、下表にまとめました。
違反行為 | 罰則 |
・単純な所持・使用・譲渡・譲受
・営利目的であった場合 |
|
・輸出入・製造の場合 |
1,000万円以下の罰金の併科あり |
覚醒剤取締法では、罰金刑が規定されていません。刑罰は懲役刑のみですので、略式裁判もありませんし、通常の刑事裁判のみとなる点に注意してください。
営利目的がある場合は、1年以上の有期懲役に500万円以下の罰金が併科されることもあります。
覚醒剤取締法違反の起訴率
覚醒剤犯罪で逮捕されると、起訴される割合が非常に高いという傾向があります。令和2年版犯罪白書によれば、令和元年に発生した覚醒剤事件の起訴率は75.7%、起訴猶予率は9.1%となっています。最新データの起訴率については、下表にまとめました。
総数 | 起訴 | 起訴猶予 | その他の
不起訴 |
起訴率 | |
覚醒剤取締法違反 | 13,142 | 9,942 | 993 | 2,207 | 75.7% |
覚醒剤取締法違反の裁判の流れ
覚醒剤取締法違反で裁判になった場合の流れについて解説します。以下の流れにより、刑事事件は行われます。
- 冒頭手続
- 証拠調手続
- 最終弁論
- 結審
それでは、1つずつ見ていきましょう。
冒頭手続
1番目の冒頭手続とは、刑事裁判で公判が開かれる際に必ず行われる一連の手続きです。
・人定質問:氏名・生年月日・職業・住所・本籍などの本人確認
・起訴状朗読:検察官による起訴状の読み上げ・審理の対象の明確化
・罪状認否:起訴された罪についての認否
証拠調手続
2番目の証拠調手続とは、裁判官や裁判員が人的証拠・物的証拠を調べながら、有罪・無罪や量刑判断を行うために必要な事実を探る手続きです。
・検察官による冒頭陳述
・検察官・弁護人・被告人による証拠提出
・法廷での証拠の取調べ
最終弁論
3番目の最終弁論では、証拠調べの後、検察官が論告・求刑し、これに対して被告人及び弁護人が最終の意見を陳述します。この一連の手続きを最終弁論といいます。
- 検察官による論告・求刑
- 弁護人による最終弁論
- 被告人による最終陳述
結審
4番目の結審とは、当事者の意見陳述ならびに証拠の提出などが終わった段階のことをいいます。具体的には、弁論手続において被告人の最終陳述が終わったことを意味しています。
罪状認否で被告人が罪を認める自白事件では、1回の審理で手続きが終了するのが一般的です。しかし、否認事件や複数の罪に問われている場合、証人尋問がある場合などは1回の審理で終わらずに、複数回に渡って公判が開かれます。結審の後は、判決の言い渡しを待つだけになります。
判決言い渡し
最後は、裁判官が判決を言い渡します。判決では、有罪・無罪を言い渡す他、有罪の場合は以下に挙げる刑罰の適用の詳細についても言い渡します。
- 有罪の場合は刑罰の内容・執行猶予するか否か
- 執行判決で保護観察をつけるか否か
- 被告人に訴訟負担させるのか否か
判決内容に不服がない場合は、事件は終了します。不服がある場合は、14日以内に控訴をするのか否かを決定し、控訴する場合は高等裁判所に控訴の申し立てを行います。
覚醒剤取締法違反の裁判で被疑者の家族に代わって弁護士ができること
覚醒剤取締法違反の裁判で、被疑者の家族の代わりに弁護士ができることは何でしょうか?具体的には、弁護士は以下の3つができます。
- 否認事件であれば無罪の獲得
- 執行猶予の獲得
- 被疑者とその家族のメンタルを最大限にサポートする
それでは、1つずつ見ていきましょう。
否認事件であれば無罪の獲得
被疑者の家族に代わって弁護士ができることの1つ目は、無罪を獲得することです。
覚醒剤事件において初めから一貫して否認をしている否認事件であれば、弁護士は無罪を獲得するために全力で弁護活動を行います。覚醒剤事件では、証拠として尿検査の結果が非常に重要です。尿検査から陽性反応が出たことから逮捕されることが多くありますが、陽性検査が出たからと言って有罪になるとは限りません。
最初の面会から一貫して無罪を主張し、覚醒剤は使用していないことを証明できる人的、物的証拠があれば、たとえ尿検査で陽性反応が出ていたとしても、無罪を獲得する可能性は十分にあります。しかし、先にも述べたように覚醒剤の起訴率は高く、無罪を獲得するためには、無罪を裏付けるための証拠を揃えることが重要です。
刑事事件専門の弁護士は、無罪を獲得するための準備活動や弁護活動を行います。
執行猶予の獲得
被疑者の家族に代わって弁護士ができることの2つ目は、執行猶予を獲得することです。
覚醒剤法取締法違反の罪は他の罪よりも法定刑が少々重く、起訴される可能性の高い事案であるため、判決も厳しくなる傾向があります。しかし、それでも事案によっては執行猶予付きの判決を得ることは可能です。
被告人が真摯に反省し入手経路などについても正直に話す、家族が再犯防止に協力的である、薬物交友者との関係を経つ、専門的な治療を受けるなど、更生に向けた努力が見られるのであれば、執行猶予判決を獲得できる可能性が高まります。
被疑者とその家族のメンタルを最大限にサポートする
被疑者の家族に代わって弁護士ができることの3つ目は、被疑者とその家族のメンタルを最大限にサポートすることです。
弁護士は接見を通じて、被疑者のメンタル面をサポートします。特に、起訴前の被疑者の段階では家族の接見が禁止されることが多く、弁護士だけが接見を許されています。
この段階においては、弁護士は被疑者のみならず被疑者の家族とも連絡を取り合い、相互の窓口ともなるため非常に重要な存在になります。刑事事件に強い弁護士であれば、どのようにサポートをすべきか、個別の事案に即して最善策を講じることができます。
まとめ
今回は、刑事事件を数多く解決してきた刑事事件専門の弁護士が、家族が覚醒剤取締法で裁判が決まった場合に裁判前に知っておくべきこと、被疑者の家族でも弁護士に依頼できるのか、といった点について解説しました。
覚醒剤取締法は、非常に厳しい法律であるため、たとえ初犯であっても実刑判決が出される可能性があります。実刑判決を受けてしまうと、その後の社会生活に支障をきたすことも十分に考えられるため、できる限り避けるべきでしょう。刑事事件に強い弁護士に、まずは相談することをおすすめします。