- MDMA所持・使用で逮捕されたあとどうなるのか?
- MDMA所持・使用で逮捕されても初犯であれば不起訴は可能なのか?
- MDMA所持・使用が発覚したらどうすべきなのか?
MDMAの所持や使用で逮捕された場合、社会問題となっている薬物事件であるだけに、初犯でも不起訴になるのだろうかと、心配は尽きないことでしょう。MDMAの所持・使用の初犯であれば、不起訴は可能なのかどうか、その見込みが知りたいと考えている人もいるかもしれません。
そこで今回は、薬物事件に精通している実績のある弁護士が、MDMAを所持・使用の初犯の人や家族が知っておきたいこと・初犯で逮捕されたあとの流れ・逮捕されても不起訴が可能なケース・発覚したときに取るべき行動などについて解説します。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
MDMAを所持・使用の初犯の人や家族が知っておきたいこと
まず初めに、MDMAを所持・使用した初犯の人や家族が知っておきたいことについて3つ解説します。
- MDMAとは
- MDMAを取り締まる法律
- MDMAの罰則
1つずつ解説します。
MDMAとは
1つ目は、MDMAについてです。
MDMAとは、正式な化学名を「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン」といい、覚醒剤とメスカリンの化学構造をヒントに合成された薬物で、後述するように、乱用性が高く「麻薬」として規制されています。
MDMAは、急性毒性として、高体温や不整脈などの重篤な症状を引き起こしたり、精神的依存を形成しやすく、使い続けると錯乱状態に陥ったり、腎臓や肝臓の機能障害を起こすことがあるとされています。本来は白色結晶性の粉末ですが、さまざまな着色がなされ、文字や絵柄の入った錠剤やカプセルの形で密売され、俗に「エクスタシー」「X(バツ、エックス)」などと呼ばれることもあります。
MDMAは、アンフェタミン(覚醒剤)などと類似した効果がありますが、セロトニンにより強く作用し、親近感、共感性などを高める他、覚醒剤と同様の神経興奮作用に加え、幻覚を起こす作用もあります。経口摂取または鼻からの吸引の他、液体に溶かして飲用する方法などにより摂取されます。
MDMAを取り締まる法律
2つ目は、MDMAを取り締まる法律についてです。
MDMAを取り締まる法律は、麻薬および向精神薬取締法(以下「麻薬取締法」という)です。麻薬取締法は、麻薬および向精神薬の輸出入、製造、譲渡などについて必要な取締りを行っています。同法12条1項本文でMDMAの所持・使用を禁止しています。
この法律は、麻薬中毒者について必要な医療を行うなどの措置を講ずることで、麻薬および向精神薬の乱用により保健衛生上の危害を防止し、公共の福祉の増進を図ることを目的とする内容になっています。
MDMAの罰則
3つ目は、MDMAの罰則についてです。
MDMAの麻薬取締法違反の罪の刑罰が適用されます。刑罰の対象となる行為と刑罰について詳しく見ていきましょう。
MDMAの輸出入、製造
- MDMAの輸出入、製造(非営利目的)⇒1年以上10年以下の懲役(麻薬取締法65条1項1号)
- MDMAの輸出入、製造(営利目的)⇒1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(麻薬取締法65条2項)
- 営利目的があるないに関わらず、未遂罪でも処罰(麻薬取締法65条3項)
- なお、麻薬原料植物を栽培した場合も、MDMAの輸出入、製造の場合と同様の罰則(非営利・営利目的・未遂罪)になります(麻薬取締法65条1項2号・2項・3項)。
MDMAの製剤、小分け、譲渡・譲受、所持
- MDMAの製剤、小分け、譲渡・譲受、所持(非営利目的)⇒7年以下の懲役(麻薬取締法66条1項)
- MDMAの製剤、小分け、譲渡・譲受、所持(営利目的)⇒1年以上10年以下の懲役、または情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金(麻薬取締法66条2項)
- 営利目的があるないに関わらず、未遂罪でも処罰(麻薬取締法66条3項)
MDMAの使用、使用のための交付、MDMAを記載した処方せんの交付
- MDMAの使用、使用のための交付、MDMAを記載した処方せんの交付(非営利目的)⇒7年以下の懲役(麻薬取締法66条の2第1項)
- MDMAの使用、使用のための交付、MDMAを記載した処方せんの交付(営利目的)⇒1年以上10年以下の懲役、または情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金(麻薬取締法66条の2第2項)
- 営利目的があるないに関わらず、未遂罪でも処罰(麻薬取締法66条の2第3項)
MDMAでの初犯で逮捕されたあとの流れ
MDMAでの初犯で逮捕されたあとはどのような流れになるのでしょうか。3つのポイントから解説します。
- 警察署での勾留
- 検察官による起訴・不起訴処分
- 起訴の場合は裁判
1つずつ解説します。
警察署での勾留
はじめは、警察署での勾留についてです。
まず警察官は、MDMA所持(あるいは使用。以下合わせて「所持等」という)の被疑事実で逮捕されている被疑者に対して、留置の必要がないと判断したときは、直ちに被疑者を釈放し、留置の必要があると判断したときは、被疑者が身体を拘束されたときから48時間以内に、書類および証拠物とともに被疑者を検察官に送致する手続きをとります。
被疑者が送致されたのち、検察官は被疑者に弁解の機会を与え、留置の必要がないと判断したときは直ちに被疑者を釈放し、留置の必要があると判断したときは、被疑者を受け取ったときから24時間以内かつ最初に被疑者が逮捕されたときから72時間以内に、裁判官に被疑者の勾留を請求します。
このように、検察官は、送致された被疑者を受け取ったときから24時間以内に、被疑者を釈放するか、勾留請求するかの判断をします。
そして裁判官は、検察官の勾留請求を受け、被疑者に対し勾留質問を行って、その当否を審査します。捜査の上で身柄の拘束が必要だと判断したときは、10日間の拘束を認める勾留決定をします。さらにやむを得ない事情がある場合は10日間を上限として勾留期間の延長を裁判官に請求します。裁判官は、請求に理由があれば10日間を上限として勾留期間の延長を決定できます。
以上のように、被疑者に対しては、最大で20日間の勾留が可能になります。
検察官による起訴・不起訴処分
2つ目は、検察官による起訴・不起訴処分についてです。
検察官は、原則として10日間の勾留期間内で、あるいは勾留期間が延長された場合にはその勾留期間内で、MDMA所持等の被疑事実について起訴・不起訴を判断しなければなりません。一方で、検察官は起訴しない場合には、MDMA所持等の被疑事実について、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの理由で、それぞれ不起訴の処分をします。
起訴の場合は裁判
3つ目は、起訴された場合の裁判についてです。
起訴された場合には刑事裁判になり、裁判所が法廷で審理することになります。
令和2年版犯罪白書によれば、麻薬取締法違反での起訴率は59.9%となっています。
MDMAの初犯で逮捕されても不起訴が可能なケース
MDMAの初犯で逮捕されても不起訴が可能なケースについて3つ解説します。
- 所持量が微量
- 家族のサポートが得られる
- 身に覚えがない
1つずつ解説します。
所持量が微量
1つ目は、所持量が微量であることです。
一般に認知されている1回の使用量以下の微量といえるMDMAを所持していたという場合であれば、所持として悪質性があり、その動機に酌むだけの事情がなければともかく、そうでない限り初犯であれば、上述した不起訴率や起訴猶予率に照らしても、起訴猶予による不起訴処分の可能性があるといえます。
なお、所持として悪質性があり、その動機に酌むだけの事情がない場合とは、たとえば、MDMA取引を仲介するために、見本として微量のMDMAを持ち運んでいたときに逮捕された場合、職業運転手がMDMAを自動車の運転で疲れてきたときに使用するため、自動車のダッシュボードに隠し持っていて発見押収され逮捕された場合などがあります。
家族のサポートが得られる
2つ目は、家族のサポートが得られることです。
本人が更生するためには、家族のサポートは欠かせません。MDMAは、幻覚を起こす作用があり、精神的依存が大きいといわれています。MDMAを断ち切るためには、本人の意思だけでは難しいといえます。
家族が積極的にサポートを申し入れ、薬物専門の医療機関に本人を通院させることを予約させたり、本人に家族などの監督を受けることを誓約させたりするなど、有利な情状を揃えて、本人の社会復帰後の更生環境が万全である旨を訴え、不起訴処分にするよう検察官に働きかける必要があります。
このときに弁護士に依頼をすれば、逮捕直後から被疑者と家族の架け橋となって動いてくれます。
身に覚えがない
3つ目は、身に覚えがないケースです。
身に覚えがないのに疑いをかけられる場合がないとはいえません。たとえば、職務質問を受けたときに、自分にやましいことがないため、尿を任意提出したところ、尿の簡易検査でMDMAの陽性反応が出たとします。しかし、自らの意思でMDMAを摂取していないのであれば、その旨を検察官に主張すべきです。
検察官からは、取り調べを受けるときに、思いあたることはないのかなどと、聞かれることでしょう。なければないと強く訴えるべきです。本人がMDMAを経口摂取、鼻から吸引、飲用したことなどをうかがわせる持物も一切なく、自宅の家宅捜索でも、MDMAとのかかわりを示す証拠が何ら見つからなければ、検察官は「嫌疑不十分」などで不起訴処分にする可能性があります。
逮捕の早い段階から弁護士がついていれば、心強い味方となってくれるでしょう。
MDMAの初犯が発覚したときに取るべき行動
MDMAの初犯が発覚したときに取るべき行動について2つ解説します。
- 【逮捕前】弁護士に相談し自首に付き添ってもらう
- 【勾留中】家族から弁護士に相談し不起訴処分に向けて動いてもらう
1つずつ解説します。
【逮捕前】弁護士に相談し自首に付き添ってもらう
1つ目は、逮捕前に弁護士に相談し、自首に付き添ってもらうことです。
自首は、捜査機関に対して自ら自分の犯罪事実を申し出て、その処分をまかせることです。
本人が自首するということは、逮捕されることを覚悟しての行動といえます。
しかし、逮捕後のことが思いやられ、気持ちの整理がつかない人もいることでしょう。そこは、自分一人で自首し逮捕されるのではなく、その前に弁護士に相談することがおすすめです。弁護士は、本人の自首に同行することが可能です。
弁護士に相談することによって、弁護士からは、逮捕後の取調べについてアドバイスを受けられ、家族との仲介の労をとってもらえ、釈放までの戦略を教えてもらうこともできます。
【勾留中】家族から弁護士に相談し不起訴処分に向けて動いてもらう
2つ目は、勾留中に家族から弁護士に相談し、不起訴処分に向けて動いてもらうことです。
被疑者が逮捕された場合、残された家族にとって、被疑者の処分がどうなるのかと不安な気持ちになることでしょう。
勾留中は被疑者本人は身動きをとることができません。弁護士にお願いしたいと思っても、必要な情報を手に入れることができず、信頼できるかそうでないかを判断できないまま弁護士を依頼してしまう、ということにもなりかねません。
しかし、家族であれば被疑者の状況に適した弁護士を選ぶことができます。このような状況では被疑者だけでなく家族もまた不安な気持ちになります。相談したらすぐに被疑者本人のところに駆けつけてくれたり、その家族の気持ちに寄り添い、不安になったときに連絡ができるようにと、弁護士直通の携帯電話やLINEなどを教えてくれたりする弁護士こそ、頼りがいのある弁護士といえるでしょう。
家族からすれば、そのような弁護士であれば心を開いていろいろと相談でき、何とか被疑者の不起訴処分に向けて動いてもらうよう、依頼しやすいものです。
まとめ
今回は、薬物事件に精通している実績のある弁護士が、MDMAを所持・使用の初犯の人や家族が知っておきたいこと・初犯で逮捕されたあとの流れ・逮捕されても不起訴が可能なケース・発覚したときに取るべき行動などについて解説しました。
MDMAの所持や使用で逮捕されても、初犯であれば不起訴となる可能性があります。MDMAに手を染めた場合、MDMAを断ち切るためには、いかに家族のサポートが大事であるかを再認識した人もいるかもしれません。MDMAの所持や使用で逮捕された被疑者やその家族の方は、被疑者が不起訴処分で終わる可能性もありますので、ぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。
この記事を監修したのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 第一東京弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設